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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
88/148

 88 簡潔に!

 まあ、倉井の言いたいことも解るけど、オレの件と高校野球界で注目されている選手の件とでは、ちょっと違う気もするけれど。


 と、そこで倉井は続けた。


「そこでですね。他の方との件と空くんの件を比較してみまして……」


 これは長くなりそうだと、オレは口をはさんだ。


「難しい話はいいからさ、考察の結果を聞かせてくれる?」


 倉井は眼鏡の端を左手でクイッと上げる。


「そうですね。よろしいですよ」

 

 倉井が答えると、オレはすかさず言う。


「簡潔に!」


 倉井の話は説明が多く、小難しい場合が多い。

 頭の良いヤツだが、かみ砕いて話してくれるから内容は理解しやすいのだけれど、とにかく長い。

 それがネックだな。


 すると倉井は小さく頷き、眼鏡の端を左手でクイッと上げる。

 そして大きく息を吸い込んで、一気に話した。


 しかし倉井の話は驚くほど簡略化されていて、しかも解りやすいものだった。

 いつもこうならいいのに、と思ったのはきっとオレだけじゃないだろう。

 隣で話を聞いていた愛優ちゃんも、えらく感心しているというか、ホッとしたような表情を浮かべているから。


「なるほど」


 やはりオレと高校球界の注目選手との件は、関係なさそうだ。

 同じような状況だったのでどうなのかと思ったが、倉井の調査の結果、オレに対しての妬みであることは確かなようだ。

 てか、凄い調査網というか、どうやって調べたのかが謎だけれど。


 倉井の話では、オレや愛優ちゃんを危ない目に遭わせた人物に、大体の見当がついたということだ。

 

「なんだって!」


「そうなの?」


 オレも愛優ちゃんも、少々興奮気味で聞き返した。


「はい。多角的に考察し、聞き込みを行い、それらを整理しながら突き詰めた私の独自調査によりますと、ほぼ間違いないかと」


 倉井は自信ありげに眼鏡の端を左手でクイッと上げる。


「それで?」


 オレが聞くと倉井は「誰がやったかということですか?」と聞き返す。

 そんなにもったいつけなくても。

 

「そうだよ」


「それを聞いてどうしますか?」


 真剣な面持ちで尋ねる倉井に、オレは正直な気持ちを話した。


「別に相手にどうのこうのっていうんじゃないんだよ。ただ、オレも愛優ちゃんも危ない目に遭って、怖い思いをした。しかも自分たちの不注意ではなく、誰かが故意にとった行動でだ」


「そうですね」


「だから、その理由を知りたいんだよ」


「理由ですか」


「そう。なぜ、オレと愛優ちゃんにああいうことをしたのか、その理由を」


「聞いてどうするのですか?」


「どうもしないよ。ただ、知る権利はあるんじゃないかな」


「もっともですね」


 ここでオレは愛優ちゃんにも聞いてみた。


「愛優ちゃんはどう思う?」


「私?」


 突然話を振られて驚いたような色を滲ませたが、彼女はキッパリと放った。


「倉井くんが言いたくないのでなければ、ぜひ聞きたいわ。空くんに賛成です」


 愛優ちゃんの真剣な言葉を聞いて、倉井は「解りました」と眼鏡の端を左手でクイッと上げる。


「実は……」


 倉井はゆっくりと話し出した。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ついに理由を犯人がハッキリするのでしょうか。 なんとなく予想はしたりしているけれど、確信がなくて初期から気になって気になって仕方なかったんですよね。 答え合わせしたいです(゜゜) [一…
[良い点] 88 簡潔に! まで読みました。 やたらと前振りが長い人っていますよね。 リアルで良かったです。(^-^)
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