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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
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 84 思わぬ出来事

 となり町で愛優ちゃんと蕎麦を食べた帰り、交通量の多い少し大きめのとある交差点で歩行者専用の信号機が赤から青に変わるのを待っていた時、バランスを崩して車道に飛び出しそうになったのを咄嗟に助けたオレ。

 我が身をていして彼女と道路の間に滑り込んだわけだが、彼女にケガもないようだしひと安心する。と、ふたりの距離がひじょーに近いことに気づいて妙に照れてしまって、それがおかしくって笑いながら「愛優ちゃんはドジだなぁ。危ないから気をつけてよ」なんて言って。

 するとそんなドキドキも束の間、彼女の言葉に絶句した。


「誰かに背中を押された気がする」


 そう聞いて後ろを振り返ってみたが、その『誰か』らしき人物は見当たらない。


「本当に?」


 オレは確認した。


「間違いなく両手で押された感覚があるもの」


「そっか」


 そこまで聞いて、オレはある出来事を思い出した。

 先月の花火大会の次の日、つまり兄貴たちのバンドのライブ当日のことを。


 その日は部活も思ったより早く終わったので、みんなとの待ち合わせ場所に行く前に、少し寄り道をすべく早めに家を出た。

 次の日のの試合会場までの道程みちのりを、自分の目で確認するためだった。

 ネットではなく、自分自身の目で足で一度行っておきたかったから。


 そしてその帰りに兄貴たちのライブ会場へ向かおうと、駅のホームでひとり電車を待っていた時だった。間もなく快速電車が通過するので、黄色い線の内側に下がるようにとのアナウンスが入り、一番前に並んでいたオレは黄色い線を確認すべく視線を下げたその刹那。


 少しスピードを落とした電車が正にオレの目の前にさしかかった瞬間、電車の方に一歩二歩と身体がバランスを崩したんだ。それはただ立っていただけのオレがいきなりバランスを崩したわけじゃない。


 オレは誰かの手によって、タイミングを計ったように後から前に押し出されたのだ。


 その時すぐに辺りを見渡したが、不審な人物の存在には気づかなかった。


 なぜオレはホームでひとに押されなければならなかったのか。

 考えても今でも何の心当たりもない。


 今回は愛優ちゃんが誰かから背中を押された。

 人気者の愛優ちゃんが故意に誰かから背中を押されるなんて。

 なぜオレ達は同じように危険な目に遭わされなければならないのか。


 そう思い、もう一度辺りを注意深く見回した。


 愛優ちゃんは誰かに押された。なぜ? なぜだ。


 振り返ると周りにはいつの間にか人だかりができていて、そのうしろに不審な笑みの高校生らしき姿が伺えた。


 オレはソイツを睨んで「アイツか!」と発し、向かっていこうとしたのだが……。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 84 思わぬ出来事 読みました。 急にサスペンス風になってきましたね! 押した人物は一体……。 こちらも続きが気になります!\(^o^)/
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