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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第1章 はじまり
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  8 次の日の教室

 母から手渡された2つの包み。

 その包みを受け取り、大袈裟に頭の上まで持ち上げて礼を言う。


「おお! ありがとうございます!」


 そして大急ぎで2つの弁当箱をカバンにしまい、「行ってきます!」と勢いよく飛び出した。


 やはり朝練があるとお腹がすく。

 成長期まっただ中のオレは、ただでさえお腹が減るので、2時間目終了時にはひとつめの弁当を、昼休みには2つ目の弁当をありがたくいただくのだ。


今日は寝坊をしたため、朝練時のランニングをする前に、すでに今学校までランニング状態だ。

少々睡眠不足気味。その上朝食を抜いてしまったばっかりに、いつもよりヘロヘロ感が増している。


 もつれそうになる足を必死で動かし、ギリギリではあったが無事間に合った。

 監督からの話は、地区予選のことについて。練習メニューとスケジュールの発表。


 レギュラーメンバーの発表は……近々。




 その後いつも通りの朝練を終え、やっとのことで教室にたどりついたわけだが。


「おはよう!」と勢いよく教室の扉を開け、窓際の自分の席へと向かう。


 涼風すずかぜ愛優あゆは楽しそうに他の女子達と談笑している。

 昨日の今日でなんだか照れくさい感じだが、オレは彼女の方に自然と目がいく。


 途中、ふと目が合った。

 にっこり微笑む彼女にドキンとして、でも悟られたくなくて。頷くというほどでもなく「おう」という感じで、小さく頭だけを動かした。


 すると彼女はオレのところに近づいてきて「昨日はありがとう」と仰るではないか。

 もちろん微笑みとともに。


 オレは朝練後で疲れているためか、彼女の笑顔にやられたせいかは解らない、謎のドキドキに襲われた。

 そんなオレでも、彼女の声に周りの目がオレ達に釘付けになっているのは感じられる。


 オレがそっけないフリで席に着くと、彼女もそのままそれまで話していた他の女子のところへと帰って行った。


 そこへにやにや顔で近づく友人。


「そ~ら~」


 心なしか嫌な予感がするが、気づかぬフリでやり過ごそう。


「おう」


そらちゃ~ん」


「なんだよ、気持ち悪い声出すなよ」


「昨日はありがとう、ってなんだぁ?」


 やっぱりか。


「別に」


「隠すなよ」


 言えるか!


 我が麗しのきみ、クラスの憧れの的の涼風愛優と相合い傘で帰ったなんて。

 それに、昨日のことはオレの大切な青春の1ページとして、心に刻んでおきたいんだ。


 不気味に微笑む友人にひとこと言ってやった。


「っるせぇ」


「ふふふ」


 なんだ。なんなんだその「ふふふ」は!



お読み下さりありがとうございました。


次話「9 不敵な笑み」もよろしくお願いします!

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