78 ああ、そういうこと!
その後、オレ達は兄貴と優希さん、そしてオレと愛優ちゃんの二組に分かれてカフェを後にした。
「それじゃあ、空くん、私たちは行きましょうか」
「え? 愛優ちゃん、行くってどこに?」
愛優ちゃんは目をパチパチしている。何か言いたげな表情だ。
オレは声にならない声で「え?」と聞き返す。
「今度行こうって行ってたじゃない」
そう言って可愛くウインクをしてみせた。
え、え? そんな約束してたっけ。
オレは脳みそをフル回転させて思い出そうとした。
いや、思い出せるはずもない。
そもそもそんな約束などしていないのだから。
約束をしていたなら忘れるはずないし、今日の計画を立てたときだって、このカフェにお互いの兄と姉を連れてきて、偶然を装って一緒にお茶するってことしか決めていないし。
オレは解らないという表情を浮かべて、「え? なに?」と口を動かす。
すると彼女は兄貴達を一瞥して、オレに微笑みを投げかける。
オレはその愛らしい笑みに笑顔で応えた。意図は解らなかったけれど。
そしたら愛優ちゃんは徐にオレの腕を掴んで、「じゃ、お先に~」と発してオレを店の外に連れ出した。
オレは突然のボディータッチに心臓をバクバクさせながら愛優ちゃんに引っ張られる状態で歩く。いつかみたいに。
そう。はじめてこのカフェに来ることになった時のように。
その時も愛優ちゃんはオレの手首をもって引っ張りながら、どんどん歩いて行ってたっけ。
今みたいに、軽いボディータッチどころか、しっかりと握られている状況に、シャイで奥手で硬派なオレは驚きと喜びを……て、そんなことを考えている場合じゃない。
兎にも角にも、オレ達はそのカフェを後にした。
背中からふたりの笑い声を受けながら。
店の外に出ると、オレは「約束してないよね?」と問いかけた。
すると愛優ちゃんは「もちろん」と笑む。
「じゃあ、どういうこと?」
オレは彼女の意図を知りたかった。
「空くん、ホントに解らないの?」
彼女は大きな目をくりくりさせながらオレに聞いてきた。
「うん。全く」
オレの答えを聞くや否や、彼女は吹きだして大笑いをする。
「なんだよ。オレ、何かおかしいこと言ったか?」
いきなり笑われて、ビックリするというよりは離島にひとり置き去りにされた旅行者のように、唖然茫然としているんですけど?
彼女は笑いを堪えて声を出そうとしているが、それもできぬようで、ただ首を大きく横に振るだけだ。
いやいやお嬢さん。
オレは何故こんなに大笑いされているのか全然解らないんですが?
一頻り笑ったことで落ち着いたのか、彼女は少々の涙目を向けながらオレに言った。
「私たちがいたら話しにくいこともあるんじゃないかなと思って。あとはふたりでゆっくりと話せばいいと思うの」
「ああ、そういうこと!」
オレは凄まじく同意して、首を上下に何度も往復させた。
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