表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第5章 気力
66/150

 66 変化のはじまり

『これからも頑張ろう会』を終えて、オレと兄貴は涼風姉妹を御殿までお送りしたわけだが。

 いつ見てもこの邸宅は素晴らしい。上品なたたずまいに綺麗に整備された庭。どことなくヨーロッパな雰囲気を醸し出して……て、ヨーロッパなど行ったこともないので()()()としか言いようがないのだが。


 きっとこの姉妹には美麗なドレスが似合う。その姿で庭園を散歩。なんと優雅な……などと想像してしまう。

 しかしながら、この大きな門のすき間からのぞく広場を見て、オレは『あそこではキャッチボールができるな』とか、『ランニングにもいいな』『周りを気にせず素振りができるな』などとすぐに野球に結びつけてしまうという残念さ。



 涼風姉妹と別れて、オレと兄貴は今来た道をとぼとぼと……というわけではなく、楽しく談笑しながら歩いて帰ったのだが。

 オレはさっき愛優ちゃんが言いかけた続きが気になって仕方がなかった。

 兄貴ならなにか知っているのではないか。だからオレの残念会と優希さんのお祝いも兼ねて『これからも頑張ろう会』としたのではないだろうか。

 だけどどう切り出していいものやら。


 そうこうしているうちに自宅の近くまで帰ってきたところで、オレはいちいち口に出して言うのは照れくさかったけど、でもどうしても今言いたい言葉を口にだした。もちろん照れがあったから言い方は少し淡泊にはなったけれど。


「今日はありがとな」


 オレは感謝の気持ちを込めて真面目に言った。


「なんだよ、急に」


「いや。言いたかっただけ」


「そっか」


 照れくさそうに頬を指でかきながらそう答える兄貴の顔は嬉しそうで。

 やはり思うことは素直に口に出さなければ伝わらないと感じた。


「さっき聞いたんだけど」


 オレは聞いてみることにした。


「ん? なんだ?」


 兄はまだ少しニヤけた顔のまま答える。


「さっき、涼風姉妹を送って行った時、家のすぐ手前で愛優ちゃんが言いかけてたんだけど」


「うん」


 オレは愛優ちゃんとさっき話していたこと、その気になっている部分を率直に聞いてみた。

 すると兄貴は「なあんだ、そのことか」と。

 そしてこう続けた。


「確かになかなか会えなくはなるだろうな」


 そんなに忙しくなるのだろうか。

 まあ、優希さんは兄貴よりひとつ上だから大学3年生だ。就職活動とかあるのだろうか。

 そもそも大学生の就活っていつから始まるのかも知らないし、優希さんが将来何になりたいのかも知らない。

 野球ばかりでなく、もっと他のことにも目を向けるべきなのかと少し思った。


「忙しくなるんだね」


「まあな。それもあるかもしれないな」


「それも、って。他にもなにかあるの?」


 当然の質問を投げかける。


 そこで兄は大きくため息をついて呟いた。


「バンドのピアノ。新しいひと探さなきゃな」



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 野球に結びつけてしまう思考回路が良かったです。 最近の就職活動は激しいですよね〜。 (もしかしたら昔からなのかもですが。^^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ