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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第5章 気力
63/148

 63 帰宅

 緑のツタが絡まる阪神甲子園球場の外観。

 つい先程までオレたちはこの球場で、全国の高校球児が憧れるこの甲子園球場で試合をしていた。

 結果は1回戦敗退と残念ではあったが、次なる目標が定まっているから気持ちを切り替え頑張ろうと思う。


 目の前には阪神高速道路の高架があり、近くにはショッピングセンター。

 駅や駅付近はリニューアルされ、新しい建物が次々と建てられているようだ。


 この景色を目に焼き付けておこう。

 そして来年の春、必ずもう一度ここで投げてやる。

 絶対に勝利してやる!


 意気込んで、学校が用意してくれたバスに乗り込む。

 ステップに右足をかけ、振り返り呟いた。


「待ってろよ」


 オレの、オレたちの夏の甲子園はこうして終わった。




* * *


 街に帰ると皆、笑顔で「お疲れさま」「よく頑張ったな」と労いの言葉をかけてくれる。

 暖かいひとたち。腑甲斐ふがいない結末ではあったが、オレは笑顔で応えた。

 一生懸命ベストを尽くした結果だ。

 応援してくれたひとたちには申し訳ない思いで一杯だが、試合に関しては後悔していない。

 

 後悔していつまでも思い悩む時間があれば、その経験を次に活かせるよう練習に励む方が有意義だ。


 家に帰ったオレは、バットを取り出し、庭で素振りをはじめた。


 っ!


 その時、さっきの試合で痛めた左足に激痛が走る。

 悔しい気持ちが芽生えてきた。

 

「今すぐに練習したいのに」


 オレは言葉に出して、拳を握った。

 しかしムリをして今以上に状態が悪化しては、今後に影響がでる。

 幸い歩く分には支障はなく、素振りのような足をひねる体勢の時だけ痛むようだ。

 オレはひとまず素振りをやめて、他の、足に負担をかけないトレーニングをすることにした。


 試合で疲れたなどと言っているヒマはない。

 1日でもトレーニングを怠ることはできない。


 軽く身体を動かしたあと、汗を流すためにシャワーを浴びる。




 その後部屋着に着替えて、「ああ~、お腹すいたぁ~」とリビングの扉をバンと開けて、その光景に息を呑んだ。


 オレはそのとき目にした光景に、一瞬全身が固まってしまった。

 思考回路までフリーズしたのだ。

 そのため、「ごはん……食べ……」と機械のように口を動かすだけの動作になってしまう。


 ただ心臓だけはバクバクと急ぎ足で波打っているのだが。


 デジャビュ? デジャブ……。デジャヴ? どれだっけ?

 まあいいや。既視感。


 以前にもこのようなことがあった。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 甲子園周りのローカルネタが良かったです。 最後、何があったのか気になりますね。(゜o゜
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