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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第4章 大切な人たち
55/150

 55 人生の縮図?

「人生の縮図ってなんだよ?」


 愛優ちゃんは倉井の話に興味なさそうだったけど、オレはコイツとはあまり話したことがなかったから、どんな考え方をするヤツなのか知りたかった。

 人間、見た目だけで判断しちゃいけない。

 ぱっと見、とっつきにくそうにみえるヤツでも、第一印象があまり良くない相手でも、じっくりと話してみると、案外良いヤツだって解ることもあるものだから。


 だから、倉井を知るいい機会だと思った。


「人生の縮図とは正にそのとおりで、ひとは日々何かの選択をしながら生きている。もしかして間違っているかもと思いながらも選択してしまうかもしれない。そしてその選択がその時には最善のように感じて、その方向に進むわけですが、その時点ではまだそれが正しい選択だったかは解らない。しかしその後、時間ときが進むとそれが正解かどうかの答えにたどり着く」


 早口で言いながら、眼鏡の端を左手でクイッと上げる。


「正解ならば言うことはないけれど、もし正解じゃなかったとしても、はじめから大方おおかたの予想はついていたとしても、その間違えた方を選択してしまう時がある。そして結果がでたあとで『やっぱりな』と少し悔やんでしまうこともある。いや、そういうことの繰り返しが人生なんじゃないかなと」


「ふむ。なるほど」


 オレは妙に納得してしまった。


「ですから先ほどのアイスココアの件で、私はそう感じたのです」


「ほう」


 オレは『ほう』としか発せなかった。

 アイスココアの件でここまで話を膨らませることができるなんて。


 確かにそうかもな。

 オレ達は毎日なにかを選び生きてるんだもんな。

 野球の試合で、次どんなボールを投げるか。ランナーを背負いながらゴロを打たれたときに、1塁に投げるか3塁に投げるか。

 一瞬で判断しないといけないときも多い。


 今日だってそうだ。

 家にずっといることもできたが、出かけることを選択し、公園で約束し、駅に向かって愛優ちゃんとカフェに来て、倉井の話を聞く。


 その全てが選択の上で成り立っているんだ。


 それぞれが人生の縮図なのかな。


 倉井ってヤツ。

 みんながいろいろ噂するのは、あまり話したことがないからかな。

 成績に対するやっかみもあるのかもしれない。

 それともこの話し方がそうさせるのか?

 でも、悪い奴じゃない。


 オレはこの倉井ってヤツ面白いな、と感じた。

 もっと話をしてみたいと思った。


 それからしばらく3人でいろんな話をしたが、やっぱり根はいいヤツで、オレ達はこれを機会に仲良くなった。


 ヤツと別れて帰り道、愛優ちゃんも倉井とゆっくりと話すことで、今までみられなかったヤツの“良いところ”をみることができて、意識が変わったと話していた。


「ひとは見かけだけじゃ、表面的な会話だけじゃ解んないね」


「ホント、そーだよなぁ」


 オレはイシシと笑いながら愛優ちゃんを見る。


「え、なに? その目は!」


 ちょっとすねた顔も可愛い。


「いや、べつに」


 オレはしらばっくれるように顔を背けて空を見る。


「だからなによ~?」


 オレの右腕を両手で掴んで揺さぶる彼女。


「いや、案外おっちょこちょいなのかな、なんて」


 さっきのアイスココアの件を思い出しながらつい笑ってしまう。


「あ、バカにしてるでしょ!」


「いえいえ、そんなことはございません」


「やっぱバカにしてる」


 そう言いながらほっぺを膨らませるその彼女を、


「バカになんかしてねーよ」


 オレはやっぱり、


「ほんとに?」


 お慕い申し上げている。


「ああ」


 冷静の皮を被ってそっけなく返すのは、


「こんなドジな私でも、これからも仲良くしてくれる?」


 照れくさいから。 


「べつにいーけど」



お読み下さりありがとうございました。


次話「56 暑さと熱さかな」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
ここまで読ませていただきました。倉井くんの『人生の縮図』発言、とても面白かったです。空も、彼を面白いと感じたようですが、愛優にとってはアイスココアからそこまで…と不本意な気持ちもあるのかも知れないです…
[良い点] 二人の初々しい関わりが良かったです。 眺めていて癒やされます。 また、人生の縮図発言は、さりげなく面白かったです。
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