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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第4章 大切な人たち
51/148

 51 暑さと熱さ(2)

 高校球児。エースで4番。一応スポーツやってて、細いながらもそれなりに力はあるし、筋肉も多少はついているつもり。

 そんなオレがおぼつかない足取りで、グイグイ引っ張られている。


 愛優ちゃんのお薦めのお店に一緒に行くことになったわけだが。

 手首を掴まれて引っ張られているオレは、他人ひとにはどう見られているんだろう。

 頼りなさげ? 困っている風? それともにやけてる?


 そりゃそうだろ。

 手首をぎゅって。


 いわゆる軽いボディータッチどころか、しっかりと握られているんだよ?

 シャイで奥手で硬派なオレは、そんなの慣れてないから足取りはおぼつかないし、引っ張られてるから頼りなさそうだし、そう見られているかと思うと困り顔にもなる。


 しかし、しっかりと握られているんだよ、手首を。

 軽いボディータッチでも、偶然手が触れあうだけでも充分ドキドキするっていうのに、しっかりと握られていたら……絶対ににやけてるよな。

 

 でも、願わくば『手首を掴まれてる』状態じゃなく、『手を繋いだ』状態でゆっくりと隣を歩きたかっ……いや、まだ早い。オレと愛優ちゃんは別に付き合ってるわけでもないんだから、まだその段階じゃない。

 告白もしてないし、てか告白なんてできねぇし。


 野球の試合じゃ『ここぞ』というときに勝負に出られるんだが、恋愛となるとダメなオレ。

 でも。まあ。今はこれくらいの距離感が心地良いっていうか。急ぐこともないっていうか。


 第一、彼女の気持ちも解んねぇしな。


 なんてことを考えながら引っ張られることしばらく。

 愛優ちゃんはあるお店の前で、急に歩みを止めるもんだから、オレは危うく彼女にぶつかりそうになった。


「うおお」


 ヘンな声が思わず漏れる。

 が、気を取り直して聞いてみた。


「このお店?」


 しかし彼女からの返事はなく、彼女は店のある一点を見つめたまま動かない。


「愛優ちゃん?」


 オレの問いに、ハッと気づいた風な愛優ちゃんが、少し困った顔をした。


「どした?」


 オレが聞くと、「あの人」と店の中にいるある人物を指さす。

 見ると、背は170ちょっとくらい。スポーツとは縁がなさそうな細身の男子、制服姿なので高校生だろう。しかも我が校の制服じゃないか。

 ということは……。


 どういうことだ?



お読み下さりありがとうございました。


次話「52 暑さと熱さ(3)」もよろしくお願いします!

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