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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第4章 大切な人たち
49/150

 49 開会式リハーサル前日(2)

 子供の頃兄貴とよくキャッチボールをした広場で出会った少年たちと、「またね」と別れてオレは駅の方に歩いて行く。


 兄貴とあの広場でキャッチボールをしていたときのことを思い出す。子供の頃の3歳の差は大きく、オレは何をしても兄貴にはかなわなかった。何でもそつなくこなす兄は、オレの憧れの存在だった。

 だから兄貴が野球を始めたら自分もやりたいと言ってマネをして、兄貴がピアノやギターを始めたら「オレもやる」と練習に励んだものだ。


 そして兄貴は野球を辞めて音楽の道に進んだが、オレは野球の道を選んだ。

 でも、いつまで経っても年の差は埋められず、オレは今でも兄貴の背中を追いかけている気がする。

 進む分野は違えども、兄貴は音楽である程度の成功を収めている。

 オレも野球でこれからも頑張っていきたい。


 そして人間としてもいつも冷静に周りを見つめて、オレが悩んでいるときなんかもさりげなく力になってくれたり、アドバイスをくれる。

 そんな兄はいつでもオレの目標であり、いつかは追いつきたい、追い越したいライバルでもあると思う。


 そういえば兄貴と優希さんはどうなったんだろう。

 兄貴は付き合う気満々だったけど、告白もしていないって言ってたし。

 あれからそのことについて話はしなかったけど、なにか進展があったら言ってくれるんじゃないかと待っていたのに。

 兄貴も特に浮かれているとか、いつもと変わった様子はないし。

 でも、まあ。報告する義務なんてないんだしな。なんて。


 ええい、じれったい。

 今夜にでも冷やかし混じりに聞いてやろう。

 って、自分のことは全然なのに、ひとのことは気になるっていう。


 


 この時間帯に外にいるだけでも暑いが、家からここまで歩いてくると額から汗が頬をつたう。

 なにか冷たいものでも飲みたい気分だ。

 それでもひたすら歩き、店が建ち並ぶ駅前に着くと、ある場所に人だかりが見える。

 オレはその人だかりを目指して歩を進めた。


 駅前広場に設置されたミストシャワーは、一瞬でも涼しさを運んでくれる。

 ホッとひと息ついたところで、不意に声をかけられた。


 振り向くとそこには……オレは平静を装い、「おう」と答える。


「涼しいね」


 愛優ちゃんの言葉にオレも「ああ、生き返ったぁ」なんて言ってみる。


 クスリと笑い、「今まで生きてなかったの?」なんて彼女が言うもんだから、「半分だけ」って言って笑い合った。

 暑さのせいか、いつもより調子よく会話ができているような気がする。


 今日のオレ、案外いけるかも?



 愛優ちゃんに偶然出逢い、いつもなら緊張のあまり素っ気なく返してしまうのに、暑さで頭が回っていないのか?

 でも、それで楽しく会話ができるなら、またそれもよし。


「それにしても暑いね~」なんて彼女が言うから。

 右手でパタパタと顔を仰ぎながらそう言うから。


 だからオレは言ったんだ。


「冷たいものでも飲み行こっか」



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
ちょうど今、夏の甲子園をやっていますよね。球児たちの熱い夏を想い浮かべながら読ませていただきました。 空、今回はいつになく乗り気で積極的ですね。愛優の返事とその後も気になります。続きも楽しみに、これ…
[良い点] なんだかとても初々しい感じでドキドキ(?)しますね! 野球ネタを忘れていないところもGoodです!
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