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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第4章 大切な人たち
47/148

 47 雑念

 あれから10日ほどが経ち、オレはいよいよ甲子園の開会式のリハーサルを前日に控え、体調、道具その他諸々の最終チェックをしている。


 あの甲子園出場決定を祝ってくれたパーティーの日から、もうそんなに日が経ったのかと思う。

 あれからオレは毎日練習に励み、ピッチング・バッティングともに、すこぶる快調だ。このままの状態をキープして、甲子園での試合に臨みたいものだ。



 8月3日の組み合わせ抽選会にて、我がチームの甲子園での1回戦は大会第2日目の第2試合と決まった。

 相手チームは優勝候補とうたわれている強豪チームだ。

 オレ達のチームも決して弱くはないとは思うが、試合は生き物だ。なにが起こるかは始まってみないと解らない。どちらにも勝ち目はある。


 甲子園という大舞台でどのように実力を発揮できるか、というところだろうか。


 緊張感はハンパないが、それよりも楽しみな気持ちの方が勝っている。


 早く明日の日が来てほしいような、もう少しこのワクワク、そわそわ感を楽しみたいような。遠足の日を待つ小学生のような、そんな気持ちだ。


 明日の準備のチェックを午前中には終えてしまい、ただ家でボーッと過ごすのもなんだな、なんて思い、オレは出かけることにした。

 自主トレは朝夕時間を区切って行うことにした。


 少なめに昼食を摂り、家を出る。

 明日に備えて身体を休めればいいものを、家にずっといると余計なことを考えてしまいそうなので、敢えて外出して気分を変えたかったというのもある。


 なぜかというと、最近妙に視線を感じるからだ。

 というか、あの花火大会の次の日、つまり兄貴たちのバンドのライブ当日。早く終わった部活のあと。みんなとの待ち合わせ場所に行く前に、少し寄り道をすべく早めに家を出た。その時の“ちょっとした出来事”以来誰かに見られているように感じることがある。


 兄貴のライブ会場へ向かおうと、駅のホームでひとり電車を待っていた時。

 そう。間もなく快速電車が通過するので、黄色い線の内側に下がるようにとのアナウンスが入った。一番前に並んでいたオレは黄色い線を確認すべく視線を下げる。少しスピードを落とした電車が正にオレの目の前にさしかかった刹那、体制を崩して電車の方に一歩二歩と身体がバランスを崩した。


 その時確かに感じたんだ。ひとの存在を。

 オレはずっと立っていて、視線を下に向けただけでバランスを崩した訳じゃない。

 

 オレは誰かの手によって、タイミングを計ったように後から前に押し出されたのだ。


 すぐに辺りを見渡したが、不審な人物の存在には気づかなかった。


 それから時間ときは過ぎ、もう忘れかけた頃に再び同じようなことが起こった。その日あたりからか、どこからとも、誰からとも解らない視線を感じるんだ。

 そのことがたまに頭をかすめるが、明後日の試合に向けて雑念を振り払い、集中しなければ。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーの進展と野球が、ほどよい差を生み出していて良かったです。 甲子園頑張って下さい!
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