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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第4章 大切な人たち
44/148

 44 告白(1)

 甲子園出場が決まり、自宅でお祝いパーティーを開いてくれた。まだ甲子園出場が決まっただけで、本番はこれからだと言って断ったのだが、「それはそれ、これはこれ」とかなんだか訳のわからない言い回しで説得されて。

 とはいえ、オレ達のチームの甲子園出場をこころから喜んでくれてのことだから、本心は嬉しいのだが。その上、まさか涼風姉妹も一緒にお祝いだなんて思ってもいない嬉しいサプライズに、終始ドキドキしていたオレ。


 両親も礼儀正しい彼女たちを気に入ったようで、楽しいひとときを過ごすことができた。


 もちろん母の手料理は格別で、テーブルを彩っていたご馳走は余ることなく、今はお皿だけが寂しそうに佇んでいるようだ。


食事も終り、しばらく経って涼風姉妹はもう帰る時間だということで。兄貴とオレは父親に涼風姉妹を送って行くように促された。



 

 玄関を出て街灯の下を楽しく話しながら、ケラケラと笑いながら歩くのは少しゆっくりめの速度で。

 7月も終わりを迎えようとする今の時期、本来なら夜でも蒸し暑い状態のはずだが。今夜は……。

 夏の夜風はいつもと違って爽やかで、心地良く肌をこころをなでてゆく。


 はじめは4人並んで歩いていたが、交差点での信号待ちの時間になんとなくふたりになったオレ達。

 兄貴は優希さんと楽しそうにオレ達の前を行く。


「今日は風が心地良いね」


 愛優ちゃんが屈託のない笑みとともに言う。

 道路を照らす灯りが眩しいのか、愛優ちゃんが眩しいのか、オレは目を細めた。

  

「そうだな」


 オレと同じように感じていたんだな、と思いながらもまたいつものようにぶっきらぼうに返してしまう。

 4人で話してるときは普通にしゃべれるのに。ふたりになるとつい。

 ていうか、照れるんだよな。


「あのふたり、いい感じじゃない?」


 愛優ちゃんは前を行く優希さんと兄貴を指してそう言った。

 言われてみればそうだよな。

 周りから見ればお似合いのカップルだ。


「そうだな」


 そう言いながらオレは兄貴の言葉を思い出していた。


 そう。期末試験の最終日。兄貴とオレは一緒に映画を観に行くことになって。

 オレは試験終了後、帰宅し、兄貴とふたりで出かけた。

 映画の前に昼食を摂りながら兄貴と話したこと。

 その後、上映寸前にオレが質問したこと。そして兄貴の返事を。

 ……思い出した。



* * *


『兄貴は好きなひととかいないの?』


 すると兄は真っ直ぐ前方を向いたまま、表情も変えずにひと言発した。


『いるよ』


『え』


 オレが声にならない声を漏らしたところで映画が始まった。

 兄のサラリとした返答に少し驚いたが、無表情にスクリーンを見つめる兄から、オレも視線を大型スクリーンへと移した。


* * *


 そうだ。兄貴の好きなひとって……。



お読み下さりありがとうございました。


次話「45 告白(2)」もよろしくお願いします!

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