43 ふふふ。来ちゃった
「今日はダブルでお祝いだな」
兄貴の言葉に一瞬なんのことかと思ったが、オレは思い出した。
彼女の所属するコーラス部も、コンクールで3位に輝いたってことを。
だけどどうしてここで一緒にお祝いすることになったのか、その成り行きをぜひとも聞いてみたい。
でもどういう聞き方をすればいいのか。
まさか、なんでこんな所にいるの? なんて聞けないし。
そんなオレのこころの中を知らずに、照れくさそうに彼女は言う。
「ふふふ。来ちゃった」
いやいや、あのね。
そのセリフ、こんな時に使うの?
でも、『ふふふ。来ちゃった』ってはにかむ姿、悪くない。いや寧ろ好みだ。
愛優ちゃん。オレはあなたをお慕い申し上げています!
「そっか」
だけどオレはついそっけなく返してしまう。
するともうひとりが口を開いた。
「ふふふ。来ちゃった」
え? ってあのね。
あなたまでそんなことを言いますか?
でも、流石姉妹。
お姉さまの『ふふふ。来ちゃった』もなかなか素敵ですぞ。
「あの、優希さんもなにかおめでたいことでも?」
「ううん。私はただの付き添い」
そう言ってケラケラと笑う。
「そうなんですか」
ふたりが来てくれたことは嬉しいけれど、オレはまだこの状況に慣れることはできない。
自宅で夕飯のつもりだったので、思いっきり食べてやる! と思っていたのに、緊張して少食になってしまいそうだ。
早足の鼓動。このまま食事なんて、まるでマラソンをしながら食べるようだ。
少し困惑した面持ちで兄貴を見ると、オレの試合の結果を知りたがっていた優希さんに兄貴が連絡をしたら、愛優ちゃんも3位になったと知って、「それならウチで一緒にお祝いをしよう」とふたりを誘ったらしい。
「びっくりしましたよ。リビングのドアを開けたらふたりが座ってたんで」
優希さんになら普通に話せる。
そこでオレはあることを思い出した。
「でも、さっき愛優ちゃんとメールで……」
オレがそう言うと「みんながサプライズパーティーにしようって言うから、ここからメールしてたの」って愛優ちゃんが言う。
「え、ここから?」
まさかそんなこととは思いもよらず、少し高めの間抜けな声色が口から飛び出した。
すると愛優ちゃんは少し上目づかいでおっしゃる。
「あ、あの。迷惑だった?」
うっ。可愛い。
「いや、そんなことないよ」
オレは慌てて否定する。
「よかった。じゃ、一緒にお祝いしましょう」
満面の笑みでそういう彼女にオレは短く答えた。
「べつにいーけど」
いつものようにぶっきらぼうに。
だって可愛すぎるその笑みが、とても照れくさかったから。
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