40 地方大会決勝戦(2)
1回の裏、ワンアウト1、3塁でオレの出番を迎えた。
できればホームランといきたいが、少なくともヒットを打ちたい。
若しくは外野フライでタッチアップを狙いたい。
右のバッターボックスの手前で大きく深呼吸をする。
先取点を取れるかどうかは、4番バッターのオレにかかっていると言っても過言ではない。
緊張したオレを応援団の声援がリラックスさせてくれる。
気負わず、監督がさっき声をかけてくれたように、思い切っていこう。
相手のピッチャーも点を入れられたくないだろうから、必死のピッチングをしてくるに違いない。
バッターボックスに入り、気迫では負けまいと、「よし来い!」と相手のピッチャーを見据える。
甘いボールがきたら全力で振り抜いてやる。
そう意気込んで迎えた第1球目。
と、少し大きめのリードをとっていた1塁への牽制球。
1塁ランナーは頭から滑り込む。
微妙なタイミングだったが、1塁の塁審の判定はセーフ。
気を取り直して投球を待つオレ。
今度はあまりリードをとっていなかったにも関わらず、1塁を牽制する相手ピッチャー。
打ってやるから早く投げろと、少しイライラしだしたところにどこからか「落ち着いていけ~」と声がかかる。
スタンドからだろうか。
声のした方をチラッと見ると、そこにはピースサインとともにニカッと笑う兄貴が見えた。
緊張とイライラがつのっていたが、兄の言葉とその姿に冷静になれた。
そうだ。意味のない牽制をしているのは、相手も緊張しているからだ。
若しくはオレの集中力を途切れさせるためかもしれない。
イライラさせて、誘い玉に手を出させるつもりかもしれない。
その手は食わない。
集中してじっくりと見極めてやる。
もう一度深く息を吸い込んで、緊張を口から吐き出す。
オレは兄に頷いて見せて、「さあ来い!」とピッチャーを睨みつけた。
相手ピッチャーが振りかぶって、今度こそ勝負だ!
「ボール」
審判が短く言う。
大きく外れたボールは相手ピッチャーの気持ちと比例しているかのようだ。
気を取り直して第2球を待つ。
さあ来い! 打ってやる!
ピッチャーの手から離れたボールは真っ直ぐにホームベースに向かってくる。
よし、いただいた!
思いっきりバットを振る。
カキンと金属バットが音を立てたと同時に、オレはバットへの負荷を思いっきり弾き飛ばす。
振り抜いたバットを手放し、1塁まで全力疾走だ。
その間に3塁走者はホームに帰り、見事先制点をゲットした。
その後の打者は外野フライと三振に倒れたが、取りあえずは1点先取できたのでよかった。
さあ、次の回も頑張ろうとマウンドに向かう。
【本文補足】
タッチアップ:フライが捕球されたのを確認して(見て)次の塁へスタートする方法のことをいいます。
「タッグアップ」ともいいます。
ノーアウト若しくはワンアウトの時にフライが打たれた場合、走者にはリタッチの義務があります。
リタッチには2種類あり、ひとつはフライが打たれたときにベースを離れていた走者が、元のベースに戻ってタッチし(触れ)直す場合と、もうひとつはあらかじめベースに触れている状態でフライが捕球されるのを待つ場合です。
お読み下さりありがとうございました。
次話「41 地方大会決勝戦(3)」もよろしくお願いします!




