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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第4章 大切な人たち
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 37 大切な人たち

 オレ達の高校は準々決勝・準決勝と順調に勝ち上がり、いよいよ明日決勝戦を迎えることになった。


 あの雨の日以来、野球しかなかったオレの人生に優しい陽だまりが訪れた。

 まるで春の日差しのように穏やかな温もりを感じる。


 まあ、簡単に言ってしまえば、オレがかねてからお慕い申し上げている、クラスの殆どの男子が憧れている涼風すずかぜ愛優あゆと、雨やどりがきっかけでちょっとばかし仲良くなれたということだが。


 野球漬けだったオレが、ふと詩的な言葉でも呟いてみようかと思うくらいに、オレの人生は劇的に変化した。いや、実際詩的に呟けているかは別として。

 野球以外のことにも目を向けてみようかと思えるようになったのだ。


 まあ、もともと音楽には興味はあったけれど、野球ほどには時間を費やしてはこなかったし、恋愛にも興味はあったけど、シャイで奥手で硬派なオレは自分からモーションをかけてどうのこうのということができないタイプで。


 ああ、それなのに、それなのに。


 愛優ちゃんとこんなに急接近できるなんて。

 でも、まあ。

 急接近っていっても特別なにかがあったわけでもないし、他のヤツらからすれば、「それってただの友だちじゃん」的な? でも、オレにすればそれでも以前に比べると大分距離が縮まった感はある。

 

 今はまだただのクラスメートだけど、ただの友だちだけれども。それでもオレには充分で。

 彼女がこの世にいてくれるというだけで、元気が出る。


 彼女だけでなく、オレには大切に想うひとがもう一人いる。

 子供の頃からいつも後をついて歩いていたっけ。

 兄貴に憧れてピアノを弾き始め、ギターを触り、歌も歌うようになった。


 スポーツだけでなく、音楽に親しむ環境が身近にあったお陰で、ピンチの時にも柔軟な発想ができるようになったんじゃないのかな、と思う。


 兄はいつもオレの気持ちに敏感に気づいてくれて、嬉しい時は一緒に喜んでくれるし、楽しい時はともにはしゃいで。哀しいときはそっと見守ってくれ、苦しい時も切ない時もさりげなく励ましてくれる。

 オレは大切な人にそっと寄り添える、そんな人間になりたいと、兄貴を見ていてそう思った。


 オレの憧れの存在だ。


 いろんな経験を積んで、オレもいつか兄貴に追いつきたい。

 オレもいつか兄のような、そんな人になりたいと、最近は特に思う。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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