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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第3章 喜びと不安と
28/150

 28 とあるライブで

 オレと愛優ちゃんは急いでライブ会場に向かった。

 今日のライブは兄の大学にあるホールで行われる。


 大学はもう夏休み中ではあるが、今日は大学祭とまではいかないがちょっとした催しがあったらしい。

 その催しのトリを飾るのが、兄貴たちのバンドなのだ。

 リハーサルを見学した愛優ちゃんの話によると、どの曲も素敵だったけど、特にこころに響いた曲があったとか。


「へえ。どんな曲?」


 オレは兄貴の曲なら全て知っている。

 曲ができると一番にオレに聞かせてくれるからだ。

 だから、愛優ちゃんがどの曲を気に入ったのか聞いてみたかった。

 兄貴の作る歌を気に入ってくれたのは嬉しいし、オレと同じ曲が好みだとなお嬉しい。


「タイトルは確か……フヘン的なんとかって」


「フヘン的?」


 あれ? おかしいぞ。

 オレの知らないタイトルだ。

 フヘン的ってまた固そうな響きだな。


「そう。『ヘン』の漢字は『変わる』を使って不変的。サブタイトルが(キミを想う気持ち)だったかな」


「へぇ。そうなんだ」


 新曲だろうか。

 初めて聞くタイトルで、その響きもなにかいつもと違った感じがする。

 それにしてもいつもならオレに、一番にできたてのほやほやを聴かせてくれるのに。

 オレは愛優ちゃんが気に入ったという曲がとても気になった。

 

 ライブの時間は30分間。

 決して聴き逃すまい。


 その時客電が消えて、ライブの開始を告げる。


「いよいよね」


「うん。楽しもうぜ」


 会場は既に熱気に包まれている。

 オレ達も音楽が好きというそれだけでも熱がこもるが、お互いの兄、姉が出演しているとなると一際ひときわ熱が入る。

 その上、会場のヒートアップにオレ達もつられる感じで、テンションも上がってきた。

 兄たちのバンドは大学でも人気があるとは聞いていたが、これほどまでとは知らなかった。


 兄のバンドのメンバーは4人。

 愛優ちゃんのお姉さんであるピアノ担当の優希さん以外は、3人とも男性だ。

 

 バンドメンバーの入場で一際盛り上がる会場。

 そのままノリノリの1曲目へと突入する。


 テンポの良い曲が続き、途中メンバー紹介が入る。

 それぞれ紹介されると『見せ場』である『ソロ』を披露する。

 メンバーの紹介が終わるとまた歌の後半部分に入る。

 そして観客も手拍子ありジャンプありで盛り上がってきたところで、曲はスローに変わり、少しのトークタイムになる。


 日常のちょっとした出来事や、メンバーのお茶目な話などを盛り込んでたまに笑いも入れながら進むトーク。オレは流石兄貴だと感心するばかり。

 隣の愛優ちゃんを見てみると、楽しそうに話しに聞き入っているのが解る。


 次に兄はおもむろにアコースティックギターをスタンドから持ち上げて、ストラップを肩にかけた。


「それでは先日、あるひとの為に作った歌をここで披露したいと思います。」


 客席からは大きな期待と大きな拍手が溢れる。


 兄が「それでは」と言うとあんなに盛り上がっていた客席が、水を打ったように静まりかえった。


 大きく深呼吸をした兄がギターをボローンと弾き始める。

 前奏の途中、その曲名を静かに告げた。



お読み下さりありがとうございました。


次話「29 とあるライブにて」もよろしくお願いします!

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