24 とある夏祭りにて
兄貴のとっておきの場所に移動したオレ達4人だが、そこに意外な人物を見つけた。
「よっ」
悟だ。アイツは今日は用事で来られないとかなんとか言ってたのに。
「おっ」
取りあえず短い挨拶を交わしておこう。
「急に予定が変更になってさ。そんでもって男2人で祭に来たってわけ」
男2人……そう言われて横を見ると、クラスの男子がひとり。
以前、試験中に愛優ちゃんとのことをしつこく聞いてきた友人『A』こと春日輝也だ。
「いやあ、こんなところで会うとはなぁ。あれ? ひょっとして彼女はクラスの憧れのキミか?」
こんなところで嫌なヤツに会ったと思っても、会ってしまったから仕方がない。
「ああ。たまたま兄貴の知り合いで」
と大分話をはしょってみた。
「そっか。オレ達は今から出店の方を見て回るんだ。またな」
ん? 案外あっさりしているものだな。
「おう。また終業式でな」
クラスメートと別れて、兄貴達が待っているところに移動する。
少し高台になっているこの場所は風通しもよく、人混みとは少し離れていてゆっくりと花火鑑賞ができそうだ。
オレ、愛優ちゃん、優希さん、兄貴の順に横並びに立って見上げる空は、鮮やかで美しい。
そしてその大輪を見上げるキミは、その花より華やかに彩られている。
『このまま時間が止まってしまえばいいのに』
この光景は、オレの心を大きく揺さぶる。
まるで詩人のようなことを考えてしまうほどに。
しばらくすると、花火の音に紛れて彼女の声が聞こえた。
「また来ようね」
彼女の声がそう聞こえた。
だけどその瞬間、またいつもの臆病なオレの登場となり、どう返事をしていいのか解らなくなった。
さっきまでは、あれだけするすると言葉が出てきていたし、愛優ちゃんとも緊張はするけど、普通に話せるようにもなっていたのに。
「え?」
だから聞こえなかったフリをした。
花火の音で彼女の言葉が聞き取れなかったように振る舞った。
手を耳の横にあてて、聞き返す素振りを見せて。
「なんでもないー」
彼女は笑いながらそう言ったけど、オレはもう一度聞きたかった。
「なんだよ。聞こえないよー」
オレも笑いながら花火の音に負けないように、大きな声で言う。
「もう言わないー」
彼女の言葉に、オレは心の中で呟いた。
ああ。いつかふたりで来よう。
* * *
花火大会も終わり、そろそろお開きの時間となった。
オレ達は人の波にのまれながらも、なんとか駅まで辿り着き電車に乗る。
その間の会話で、兄貴たちが明日ライブをするという話になったときのこと。
「バンドのコンサートがあるんですね! 行ってみたいです! ね、空くん」
と、彼女の鶴の一声でオレも明日のライブに行くことになった。
愛優ちゃんて音楽に興味があるのかな。
「愛優ちゃんは音楽が好きなの?」
「うん。私もお姉ちゃんに憧れて、子供の頃からピアノを習っているのよ」
「へえ~、そうなんだ。オレも兄貴の影響でピアノとギターを少しばかりかじったんだよ」
「そうなの!? なんか気が合うね」
嬉しそうにそう言う愛優ちゃんをお慕い申し上げている。
最寄りの駅前でまた明日と手を振り、お互い自分たちの家の方向へと歩き出す。
楽しかった夏祭りの話をしながら、オレと兄は家路につく。
だがその時のオレは、次の日あんなことが起こるなんて、まだ知る由もなかった。
お読み下さりありがとうございました。
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次話も本日更新します!




