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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第2章 進展
24/150

 24 とある夏祭りにて

 兄貴のとっておきの場所に移動したオレ達4人だが、そこに意外な人物を見つけた。


「よっ」


 悟だ。アイツは今日は用事で来られないとかなんとか言ってたのに。


「おっ」


 取りあえず短い挨拶を交わしておこう。


「急に予定が変更になってさ。そんでもって男2人で祭に来たってわけ」


 男2人……そう言われて横を見ると、クラスの男子がひとり。

 以前、試験中に愛優ちゃんとのことをしつこく聞いてきた友人『A』こと春日輝也かすがてるやだ。


「いやあ、こんなところで会うとはなぁ。あれ? ひょっとして彼女はクラスの憧れのキミか?」


 こんなところで嫌なヤツに会ったと思っても、会ってしまったから仕方がない。


「ああ。たまたま兄貴の知り合いで」


 と大分話をはしょってみた。


「そっか。オレ達は今から出店の方を見て回るんだ。またな」


 ん? 案外あっさりしているものだな。


「おう。また終業式でな」


 クラスメートと別れて、兄貴達が待っているところに移動する。


 少し高台になっているこの場所は風通しもよく、人混みとは少し離れていてゆっくりと花火鑑賞ができそうだ。


 オレ、愛優ちゃん、優希さん、兄貴の順に横並びに立って見上げる空は、鮮やかで美しい。

 そしてその大輪を見上げるキミは、その花より華やかに彩られている。


『このまま時間ときが止まってしまえばいいのに』


 この光景は、オレの心を大きく揺さぶる。

 まるで詩人のようなことを考えてしまうほどに。




 しばらくすると、花火の音に紛れて彼女の声が聞こえた。


「また来ようね」


 彼女の声がそう聞こえた。

 だけどその瞬間、またいつもの臆病なオレの登場となり、どう返事をしていいのか解らなくなった。

 さっきまでは、あれだけするすると言葉が出てきていたし、愛優ちゃんとも緊張はするけど、普通に話せるようにもなっていたのに。


「え?」


 だから聞こえなかったフリをした。

 花火の音で彼女の言葉が聞き取れなかったように振る舞った。

 手を耳の横にあてて、聞き返す素振そぶりを見せて。


「なんでもないー」


 彼女は笑いながらそう言ったけど、オレはもう一度聞きたかった。


「なんだよ。聞こえないよー」


 オレも笑いながら花火の音に負けないように、大きな声で言う。


「もう言わないー」


 彼女の言葉に、オレは心の中で呟いた。


 ああ。いつかふたりで来よう。




* * * 


 花火大会も終わり、そろそろお開きの時間となった。

 オレ達は人の波にのまれながらも、なんとか駅まで辿り着き電車に乗る。

 その間の会話で、兄貴たちが明日ライブをするという話になったときのこと。

 

「バンドのコンサートがあるんですね! 行ってみたいです! ね、空くん」


 と、彼女の鶴の一声でオレも明日のライブに行くことになった。


 愛優ちゃんて音楽に興味があるのかな。


「愛優ちゃんは音楽が好きなの?」


「うん。私もお姉ちゃんに憧れて、子供の頃からピアノを習っているのよ」


「へえ~、そうなんだ。オレも兄貴の影響でピアノとギターを少しばかりかじったんだよ」


「そうなの!? なんか気が合うね」


 嬉しそうにそう言う愛優ちゃんをお慕い申し上げている。



 最寄りの駅前でまた明日と手を振り、お互い自分たちの家の方向へと歩き出す。

 楽しかった夏祭りの話をしながら、オレと兄は家路につく。

 だがその時のオレは、次の日あんなことが起こるなんて、まだ知る由もなかった。



お読み下さりありがとうございました。


次話「25 ある夏祭りにて」もよろしくお願いします!

次話も本日更新します!

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― 新着の感想 ―
ここまで読ませていただきました。夏祭り、主人公にとっても、愛優にとっても、楽しいひとときとなり、良かったです。主人公がクマのぬいぐるみを当てた場面は、格好良かったですね。いつかふたりで来よう、と呟く場…
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