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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第2章 進展
22/150

 22 とある夏祭り

 母に頼まれた『おつかい』から家に帰るとオレは一度シャワーで汗を流し、今夜の夏祭りに備えて入念に支度をする。

 最後に整えがいのない黒い短髪を、それでもとかしてみたりして。

 よし、と鏡に向かって両手のひらをほっぺにパンパンと、気合いを入れる。

 

「行ってきまーす」


 いつもより一際ひときわ元気な声で玄関を後にした。



 夏祭りが開催される最寄りの駅。

 改札を出たところで、午後6時に4人で待ち合わせている。

 オレは15分前に到着してそわそわしていた。


 しばらくすると、改札から愛優ちゃんがニコニコしながら出てくるのが見える。


「わ、空くん。早いね」


 うっ。空くんだなんて。

 彼女の口から、空くんだなんて……嬉しすぎるぜ。


「おう」


 だけど心とは裏腹に、こんな言い方しかできないオレ。


「お姉ちゃんたち、練習が長引いて少し遅れるかもって」


「そっか」


 なんだなんだ。

 先日の映画の後、4人で話した時はするすると言葉がでてきたのに、ふたりになると途端にこれかよ。

 自分でもびっくりする。

 何か話さなければと思うけど、何の話題も見つからない。というか、緊張のあまり考えられない。


「浴衣……」


 すると彼女が口を開いた。


「え?」


 よく聞き取れなかったので、聞き返す。


「本当は浴衣を着てこようかとも思ったんだけどね。お姉ちゃんはバンドの練習の帰りに来るから洋服だし、私ひとりで浴衣っていうのもなんだなって思って洋服にしたの」


 そうだったのかぁ。

 くぅ~。見たかったな、愛優ちゃんの浴衣姿。


「そうなんだ」


 なのに、こんな単語しかでてこないオレのバカバカ。


「見たかった?」


 そりゃもう!


「まぁな」


 これだよ。


「ふふ。じゃあ、またいつか一緒にお祭り行くことがあれば、その時は浴衣着ちゃおっかな」


 ぜひ! ぜひお願いします!


「あ、ああ」


 ちょっとした照れもあり、人差し指でほっぺをポリポリと軽くかきながら返事をする。

 とそこへ兄の海と愛優ちゃんの姉の優希さんがやってきた。


「お待たせ~」と優希さんの元気のいい言葉に、「いえいえ、まだ時間前ですから」と返す。


 ここから夏祭りの会場までは徒歩で10分ほど。

 もう祭は始まっているので、人混みにもまれながらも人の波に乗って、会場までゆっくりと歩く。

 その間、オレはいつになくはしゃいでしまったが、それも自然にそうなったたけで。


 やっぱり4人だと、テンションが上がるようだ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「23 とある夏祭りで」もよろしくお願いします!

本日更新します!

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― 新着の感想 ―
ここまで読ませていただきました。兄弟と姉妹、四人だと会話も弾む主人公が、とても嬉しそうで、さらに花火大会、いいですね…! 母親の頼みを断れないところも、空の優しさですね。ただ、途中で会った悟とは、何…
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