22 とある夏祭り
母に頼まれた『おつかい』から家に帰るとオレは一度シャワーで汗を流し、今夜の夏祭りに備えて入念に支度をする。
最後に整えがいのない黒い短髪を、それでもとかしてみたりして。
よし、と鏡に向かって両手のひらをほっぺにパンパンと、気合いを入れる。
「行ってきまーす」
いつもより一際元気な声で玄関を後にした。
夏祭りが開催される最寄りの駅。
改札を出たところで、午後6時に4人で待ち合わせている。
オレは15分前に到着してそわそわしていた。
しばらくすると、改札から愛優ちゃんがニコニコしながら出てくるのが見える。
「わ、空くん。早いね」
うっ。空くんだなんて。
彼女の口から、空くんだなんて……嬉しすぎるぜ。
「おう」
だけど心とは裏腹に、こんな言い方しかできないオレ。
「お姉ちゃんたち、練習が長引いて少し遅れるかもって」
「そっか」
なんだなんだ。
先日の映画の後、4人で話した時はするすると言葉がでてきたのに、ふたりになると途端にこれかよ。
自分でもびっくりする。
何か話さなければと思うけど、何の話題も見つからない。というか、緊張のあまり考えられない。
「浴衣……」
すると彼女が口を開いた。
「え?」
よく聞き取れなかったので、聞き返す。
「本当は浴衣を着てこようかとも思ったんだけどね。お姉ちゃんはバンドの練習の帰りに来るから洋服だし、私ひとりで浴衣っていうのもなんだなって思って洋服にしたの」
そうだったのかぁ。
くぅ~。見たかったな、愛優ちゃんの浴衣姿。
「そうなんだ」
なのに、こんな単語しかでてこないオレのバカバカ。
「見たかった?」
そりゃもう!
「まぁな」
これだよ。
「ふふ。じゃあ、またいつか一緒にお祭り行くことがあれば、その時は浴衣着ちゃおっかな」
ぜひ! ぜひお願いします!
「あ、ああ」
ちょっとした照れもあり、人差し指でほっぺをポリポリと軽くかきながら返事をする。
とそこへ兄の海と愛優ちゃんの姉の優希さんがやってきた。
「お待たせ~」と優希さんの元気のいい言葉に、「いえいえ、まだ時間前ですから」と返す。
ここから夏祭りの会場までは徒歩で10分ほど。
もう祭は始まっているので、人混みにもまれながらも人の波に乗って、会場までゆっくりと歩く。
その間、オレはいつになくはしゃいでしまったが、それも自然にそうなったたけで。
やっぱり4人だと、テンションが上がるようだ。
お読み下さりありがとうございました。
次話「23 とある夏祭りで」もよろしくお願いします!
本日更新します!




