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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第2章 進展
19/148

 19 意外な展開に

 こんなことがあるのだろうか。

 こんな奇跡的な偶然。いや、これは必然か。そう思いたい。

 兄貴とその大学の1歳上の先輩でありバンドメンバーでもあるお姉さまと、クラスメイトの涼風、オレの4人は偶然同じ映画館で同じ時間に同じ映画を観ていて、帰りにお茶を飲みに行くことになった。


 涼風と1対1では緊張してなかなか上手く言葉が紡げないオレだが、兄貴やお姉さまが一緒ならなぜか会話が弾む。


 オレ達4人は、映画館近くの喫茶店でケーキセットを頼んだ。

 兄貴とお姉さまは流石大人で、ブラックコーヒーを当たり前のように注文している。

 オレと涼風は紅茶を注文した。涼風はロイヤルミルクティーを頼んでいたが、オレは少しだけ背伸びしてストレートティーにした。「甘いケーキには少し苦みがある飲み物が合う」とかなんとか言いながら。


 話は映画の話題になり、お互い感想を言い合ったり冗談を言い合ったり。

 オレにしては珍しく舌がよく回った。


 ある程度話していると、ふと小さなことが気になってきた。

 だから思いきって言ってみる。


「あの。涼風もお姉さんも名字が同じなんで、『涼風さん』と『涼風』じゃ呼びにくいんですが、お姉さんとお呼びするのもなんだし。どうしましょうか」


 そこで涼風も「そうそう!」と同意してくれる。


「私もお兄さんには『夏野さん』で彼には『夏野くん』って呼ぶのややこしいなって思ってたんです」


 するとお姉さんは「それはそうよね」と。


「じゃ、呼び方決めよっか」


 という兄の提案で、彼女達は兄貴のことは『うみ』と、オレのことは『そら』と、オレ達はお姉さんのことは『優希ゆき』と、妹の方は『愛優あゆ』という風に名字ではなく、名前で呼び合うことにした。もちろん『くん』とか『さん』とかをつけて呼びやすい呼び方で。


 呼び方問題も解決したし、よかったよかったとひと息ついたところでそろそろ今日はお開きに、ということになった。


 帰り際、兄貴が何気に言ったことから事態は思わぬ方向へ。


「そういえばさ、今度の土曜日、花火大会があったよなぁ」


「そうそう! 今年は大きな規模で開催されるみたい」


 優希ゆきさんが身を乗り出して答える。


「わあ。行きたいなぁ。最近花火大会なんて行ってないから」

 

 愛優あゆちゃんが少し寂しそうに答えると、ニヤリとした笑みとともに「へえ~、そうなんだ」と言う兄。


 またなにか企んでいるに違いない。


「俺たちもさあ、最近行ってないんだよね~。コイツとふたりで行くのもなんだし」


 兄は言葉を続けた。


「じゃあ、いっそのこと俺たち4人で行くってのはどう?」


「え」


「ちょっ! 兄貴、何言ってんだよいきなり。失礼だよ」


「あれ? お前、夜は部活ないからどうせヒマだろ?」


「まあ、流石に夜は部活はないけど。てか、迷惑だよ。ほんとスミマセン、こんな兄貴で。気にしなくていいから」


 一緒に行きたい気持ちはほんの少し……いや、かなり多めにあったが、兄の突然の申し出にオレは申し訳なく思い、慌てて否定した。

 すると。


「いいですよ」


 愛優ちゃんがいいですよって。


「ええっ!」


 いいの? マジで?



お読み下さりありがとうございました。


空にとってはなんだか嬉しい展開に。

次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人の初々しいやり取りがとても良いですね! 空の二人っきりだと無口になっちゃうのにお兄さんがいるとナチュラルになれる一面も可愛くて良い。 愛優ちゃんが意外と積極的なのにベタベタしない所も…
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