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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第2章 進展
17/150

 17 嬉しい偶然

 挿入歌とともに画面に流れる字幕には、その映画に携わった全てが文字として記されている。

 多くのひとが心血しんけつを注ぎ、その映画を制作するために時間を費やした結晶だと思うから、物語が終わっても、まだ席は立たない。


 オレ達はやはり兄弟だからか、考え方が似ていると思う。

「映画はラストの字幕まで観てこそ、ちゃんと最後まで鑑賞したと言える」なんて言いながら、いつもちゃんと最後までその映画の余韻に浸りながら、映画の全てを堪能する。

 とは言うものの、映画によってはラストまで観終わってからのサプライズというか、嬉しいおまけが流れてくる場合もあるので、その全てを見逃したくないというのも理由のひとつではあるのだが。



 だからオレと兄は、その映画に関わった全てのひとたちへの敬意を込めて、字幕が終了し、客電がついてから席を立つことにしている。

 笑いあり涙ありの映画に大満足して、終了とともに大きく伸びをする。



 人気作なので、大きな劇場もほぼ満席状態。

 最上段の席で観ていたオレ達は、出入り口の人混みが一段落ついてから席を立つことにした。


 階段を降り、出入り口付近にさしかかったとき不意に名前を呼ばれる。


「夏野くん」


 兄とオレはその声の主を見極めようと、振り返る。

 が、そこには綺麗なお姉さまが。


 え? オレ、こんなひと知らないぞ。

 以前にどこかでお会いしたことがあるのか?

 いや、こんな素敵なひとならば、一度お目にかかったら忘れるはずはない。

 人違いか? 


 いや、確かにオレの名字を呼んだ。

 誰だろう?


「おう!」


 その言葉に唖然とする。

 兄の知り合いだったのか。まあ、兄弟だから当然名字が同じ訳で。紛らわしい。


「同じ映画を観ていたのね」


「そうだなー。気が合うな」


 流石兄貴だ。こんな美人相手でも流暢に話している。

 オレはふたりのやり取りをただ目で追うだけだ。


「あ、こいつ俺の弟のそら


「はじめまして」


「あ、は、はじめまして」


 急に紹介され、緊張のあまり声がうわずってしまったが、ペコリとお辞儀をして一応笑顔で応えた。


「彼女は俺と同じ大学のひとつ先輩」


「へえ~、そうなんですか」


 兄貴より年上だなんて思えない。いや、1歳くらいならほぼ変わらないよな。


「んでもって、バンドのピアノ担当」


 ふんふん。バンドのピアノ担当……って。


「ええー。気づかなかった」


 兄貴のバンドの演奏は何度も聞いたことがある。

 コンサートにだって行ったし。でもピアノは女性なんだな、ぐらいでそんなによくは見ていなかった。

 ていうか、ハッキリ言って、ボーカルの兄の歌を聴きに行っていたのだから、あまり周りを見ていなかったという方が正しいかもしれない。


「よろしくね」


「あ、こちらこそよろしくお願いします! あの、なんてお呼びすれば……」


「そっか。そういえばまだ言ってなかったな。彼女は……」


 と兄がその名前を口にする前に、そのお姉さまに誰かが声をかけてきた。


「おまたせ」


 全員が勢いよく走ってきたその声の主の方に目をやる。


「あ」


「あ」


 突然の出来事に、お互い声が漏れる。

 まあ、オレにとっては嬉しい偶然なんだけれど。



お読み下さりありがとうございました。


次話「18 それではお茶でも」もよろしくお願いします!

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