15 兄貴とお出かけ?
なんとか無事に試験最終日を終えることができた。
終業のチャイムとともに伸びをして、深呼吸をする。
自分でもまずまずだったんじゃないかと。いや、まだ返却されるまで安心はできないが。
とりあえず、これで今日は心置きなく兄貴と映画を観に行くことができる。
試験も終わって明日から終業式までの間、試験休みに入る。だが、夏の甲子園出場を掛けた地区予選大会があるので、休んでいるヒマはない。
また明日から部活が始まるので忙しい毎日になるし、試験前に監督から発表があって、レギュラー入りが確定したので、気合いを入れて頑張らなければならない。
試験期間中、部活はなかったけど、みんな試験勉強の合間に自主トレは欠かさない。
素振りにキャッチボール、腹筋に腕立てとストレッチ……。
やはりスポーツをしている者は、1日休むと身体がなまってしまい、元に戻すのには1週間はかかる。
それを1週間も休めば、戻すのに1ヶ月はかかってしまうからだ。
オレも机に向かって勉強をしては、気分転換も兼ねて身体を動かしていた。
勉強の合間に運動を取り入れた方が、勉強に良い影響があると聞いたことがあるが、実際、身体を動かした後の方が集中して勉強に取り組めて、はかどったものだ。
帰り支度を整えて教室を出るところで、涼風愛優と一緒になり言葉を交わす。
「試験やっと終わったね」
煌めく笑顔とともに話しかけられて、オレの心臓は一足先に運動を始めた。
今度は頑張らねば。
「ああ。どうだった?」
よし、返せたぞ。
「まあまあかな。夏野くんは?」
「オレもまあまあかな」
そう言って笑い合った。
今日は「これからどうする」か聞かれて、「一旦家に帰って兄と流行の映画を観に行く」と答えると、彼女は頬を緩めながら言う。
「お兄さんとお出かけ? 仲が良いのね」
お出かけって……可愛らしい言い方だな。
「まあな。涼風は?」
「私も今日その映画観に行くのよ。会えるかもね」
え、そうなんだ。
同じ日に同じ映画を観る予定だなんて、それだけでももう嬉しい。
「そうだな」
少し照れ隠しもあって、そっけない返事をしてしまう。
だってそうだろ?
おお! 会えるかもしれないな! 楽しみだよ。
それとも、いっそのこと一緒に行くか?
なんてとても言えねぇ。
「何時の部?」
「まだ決めてない。そっちは?」
「私も」
「そっか」
そこで話は終わってしまい、「じゃあね」と手を振り友人達と去って行く彼女の後ろ姿を見送った。
「おい。なにボーッとしてんだよ。帰るぞ」
後から来た友人に声をかけられ、「おう」と答え歩き出した。
帰り道、友人と冗談を言ってはしゃぎながらも、頭の中は『兄貴とのお出かけ』のことで一杯だ。
偶然でも彼女とまた会えるかもと思うと、今日の映画が俄然楽しみになった。
お読み下さりありがとうございました。
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