145 何がどうしてこうなった(1)
「一緒に帰ってくれませんか?」
どういう意味だ?
オレが答えに困っているのを見て、横からキャプテンと悟が肘でつついてくる。
「一緒に帰ろうって言われても……」
どう答える?
オレが言葉を選んでいると、悟がにやにやとしながら言う。
「いいなぁ空は、モテモテでー」
悟のひと言で彼女、俯いちゃったじゃないか。
「やめろよ!」
「なのに奥手なんだよなー」
「もういいから!」
確かにオレはシャイだから。それに奥手なんだ。硬派なんだ!
なんて言ってる場合か。ただ一緒に帰ってほしいと言われただけだし、2人とも騒ぎすぎなんだよ。
だけどオレは愛優ちゃんのことをお慕い申し上げているんだ。
他の女子と帰るなんてできるはずもない。
キッパリと断ろう。
でも、何て言ったらいい?
相手を傷つけないように断るには。
「えーっと。キミ1年生?」
「はい」
俯いていた顔を上げ、彼女は元気よく答えた。
「はじめまして、だよね?」
「はい」
「オレはキミを知らない」
「……はい」
「キミもオレのことを知らない」
「いえ、知っています!」
「そう?」
「甲子園で活躍されているのをテレビで見ましたので」
「それは知ってる、じゃなくて見たことある、じゃないかな」
「そう……ですね」
「お互いのことは何も知らないんだよ」
「はい」
「だから一緒には帰れないよ」
「そう……ですか」
解ってくれたようなので、「じゃあね」と彼女に言い、帰り支度の続きをはじめる。
と、そこへ愛優ちゃんがやって来た。
「空くん、もう部活終わりそう?」
「あ、今片付けてるところだよ」
「よかった。久しぶりにみんなで一緒に帰ろ! って誘いに来たの」
「お、いいねー」
「じゃ、いつものところで待ってるね、倉井くんと」
「おう」
「また後でねー」
軽く右手をあげ微笑み去って行く愛優ちゃんを見送って呟く。
「久しぶりにみんなで、って言っても3日ぶりぐらいじゃないか?」
「だな」
フフッと悟と笑い合った。
「キャプテンお疲れさま」
「お疲れー」
あとは部室でユニフォームから制服に着替えて、っと。
「悟、片付いたか?」
「うん」
「じゃ、部室に行こっか」
「はい!」
悟が返事をする前に聞こえてきた声。
オレは声の方に振り向いた。
さっき話しかけてきた女子がニコニコ笑顔で立っている。
え、でもちゃんと断ったし、もう帰ったんだと思ってたよ。
空、どうする?
「えーっと、名前は?」
「小林瑠奈です」
なるべく優しい口調を心がけ、言葉を発する。
「小林さんは野球部員じゃないから部室には行けないよ」
それを聞いて彼女は顔を赤らめて答える。
「そ、そうですね」
「じゃあね」
オレは悟と歩き出した。
それから部室で着替え、待ち合わせ場所に向かう。
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