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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第9章 心機一転
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145/151

145 何がどうしてこうなった(1)

「一緒に帰ってくれませんか?」


 どういう意味だ?

 オレが答えに困っているのを見て、横からキャプテンと悟《さとし》が肘でつついてくる。


「一緒に帰ろうって言われても……」


 どう答える? 

 オレが言葉を選んでいると、悟《さとし》がにやにやとしながら言う。


「いいなぁ空は、モテモテでー」


 悟《さとし》のひと言で彼女、俯《うつむ》いちゃったじゃないか。


「やめろよ!」


「なのに奥手なんだよなー」


「もういいから!」


 確かにオレはシャイだから。それに奥手なんだ。硬派なんだ!

 なんて言ってる場合か。ただ一緒に帰ってほしいと言われただけだし、2人とも騒ぎすぎなんだよ。

 だけどオレは愛優《あゆ》ちゃんのことをお慕い申し上げているんだ。

 他の女子と帰るなんてできるはずもない。


 キッパリと断ろう。

 でも、何て言ったらいい?

 相手を傷つけないように断るには。


「えーっと。キミ1年生?」  


「はい」


 俯いていた顔を上げ、彼女は元気よく答えた。


「はじめまして、だよね?」


「はい」


「オレはキミを知らない」


「……はい」


「キミもオレのことを知らない」


「いえ、知っています!」


「そう?」


「甲子園で活躍されているのをテレビで見ましたので」


「それは知ってる(・・・・)、じゃなくて見たことある(・・・・・・)、じゃないかな」


「そう……ですね」


「お互いのことは何も知らないんだよ」


「はい」


「だから一緒には帰れないよ」


「そう……ですか」


 解ってくれたようなので、「じゃあね」と彼女に言い、帰り支度の続きをはじめる。

 と、そこへ愛優《あゆ》ちゃんがやって来た。


「空くん、もう部活終わりそう?」 


「あ、今片付けてるところだよ」


「よかった。久しぶりにみんなで一緒に帰ろ! って誘いに来たの」


「お、いいねー」


「じゃ、いつものところで待ってるね、倉井くんと」


「おう」


「また後でねー」


 軽く右手をあげ微笑み去って行く愛優《あゆ》ちゃんを見送って呟く。


「久しぶりにみんなで、って言っても3日ぶりぐらいじゃないか?」 


「だな」


 フフッと悟《さとし》と笑い合った。


「キャプテンお疲れさま」


「お疲れー」


 あとは部室でユニフォームから制服に着替えて、っと。


「悟《さとし》、片付いたか?」


「うん」


「じゃ、部室に行こっか」


「はい!」


 悟《さとし》が返事をする前に聞こえてきた声。

 オレは声の方に振り向いた。

 さっき話しかけてきた女子がニコニコ笑顔で立っている。

 え、でもちゃんと断ったし、もう帰ったんだと思ってたよ。


 空、どうする?


「えーっと、名前は?」


「小林瑠奈(るな)です」


 なるべく優しい口調を心がけ、言葉を発する。


「小林さんは野球部員じゃないから部室には行けないよ」


 それを聞いて彼女は顔を赤らめて答える。


「そ、そうですね」


「じゃあね」


 オレは悟《さとし》と歩き出した。


 それから部室で着替え、待ち合わせ場所に向かう。



お読み下さりありがとうございました。


次話「146 何がどうしてこうなった(2)」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
145 何がどうしてこうなった(1)読みました。 小林さん、何者か気になります。 これから何か起こるのか、あるいは……? と、ドキドキします。 続きが気になります!(ФωФ)!
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