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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第2章 進展
14/150

 14 兄貴とオレ

 兄の出来たてホヤホヤの新曲は、オレの胸に響いた。


「兄貴、すごくいいよ」


「まあ、俺が作った歌だからな」


 照れ隠しか、そんな言葉を放ちながらも嬉しそうにしている兄に、歌詞が恋愛をしている人の心には刺さると感じたことと、曲調がバラードで胸に響くと少し興奮気味に伝えた。

 それほど、今のオレには共感できるものだった。


「そっか」


 優しい笑みとともに兄は続けた。


「実は、これはお前のために作ったんだよ」


「え!?」


「今日帰って来た時の空の様子を見てて、きっと好きなひとができたんだろうと思ってさ」


「そんなの解るのか?」


「そりゃ解るよ。ってか、お前は解りやすいよ。今まで野球一条(ひとすじ)で頑張ってきてたお前のことだから、きっとこんな気持ちなんだろうなって」



 兄はオレより3歳上で、大学の2年生だ。

 しかも小学校から野球一条ひとすじのオレとは違って、音楽一条。

 

 ピアノにギターにウクレレを弾きこなし、たまにベースまで。しかもバンドでボーカルなんぞを担当しているという。

 そのため、大学ではファンもついているくらいの人気者らしい。


 野球少年であるオレの整え甲斐のない黒い短髪とは違って、少し茶色に染められた髪は海風になびいて、夏の海によく似合うだろう。名前が『うみ』というだけあって。

 オレの方は高校球児だけあって、夏の空にピッタリだ。なんて。


 両親も名字が『夏野なつの』だからか、夏が好きだということで、子供にうみそらなんて爽やかな名前をつけたとか。

 夏野海と夏野空だなんて。笑えねぇ。


 でも兄は別にチャラチャラしている訳ではないんだ。バイトだって頑張っているし、大学だってそこそこ頭の良いところに通っている。将来は大手企業に就職するのだろうか、それとも夢を追い続けるのだろうか。


 そんな兄と試験最終日に、一緒に出かけることになった。オレ達は好きなことは違うけれども、お互いのやりたいことを尊重して認め合っている仲の良い兄弟だ。

 オレの部活が忙しいからなかなか時間が合わないが、試験の最終日とか部活が休みの時なんかは、時間が合えばよく一緒に出かけたりしている。


 今までいろんな話をしてきたが、考えたら好きなひとの話ってあまりしたことがないように思う。

 それなのに、オレの様子を見ただけで察してくれるなんて、流石は兄貴だ。

 兄にはなぜかなんでも素直に話せる。 


 試験最終日、オレ達は映画を観に行くことになった。

 まさかそこであんな出来事に遭遇するとは……。



お読み下さりありがとうございました。


次話「15 兄貴とお出かけ?」もよろしくお願いします!

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