14 兄貴とオレ
兄の出来たてホヤホヤの新曲は、オレの胸に響いた。
「兄貴、すごくいいよ」
「まあ、俺が作った歌だからな」
照れ隠しか、そんな言葉を放ちながらも嬉しそうにしている兄に、歌詞が恋愛をしている人の心には刺さると感じたことと、曲調がバラードで胸に響くと少し興奮気味に伝えた。
それほど、今のオレには共感できるものだった。
「そっか」
優しい笑みとともに兄は続けた。
「実は、これはお前のために作ったんだよ」
「え!?」
「今日帰って来た時の空の様子を見てて、きっと好きなひとができたんだろうと思ってさ」
「そんなの解るのか?」
「そりゃ解るよ。ってか、お前は解りやすいよ。今まで野球一条で頑張ってきてたお前のことだから、きっとこんな気持ちなんだろうなって」
兄はオレより3歳上で、大学の2年生だ。
しかも小学校から野球一条のオレとは違って、音楽一条。
ピアノにギターにウクレレを弾きこなし、たまにベースまで。しかもバンドでボーカルなんぞを担当しているという。
そのため、大学ではファンもついているくらいの人気者らしい。
野球少年であるオレの整え甲斐のない黒い短髪とは違って、少し茶色に染められた髪は海風になびいて、夏の海によく似合うだろう。名前が『海』というだけあって。
オレの方は高校球児だけあって、夏の空にピッタリだ。なんて。
両親も名字が『夏野』だからか、夏が好きだということで、子供に海と空なんて爽やかな名前をつけたとか。
夏野海と夏野空だなんて。笑えねぇ。
でも兄は別にチャラチャラしている訳ではないんだ。バイトだって頑張っているし、大学だってそこそこ頭の良いところに通っている。将来は大手企業に就職するのだろうか、それとも夢を追い続けるのだろうか。
そんな兄と試験最終日に、一緒に出かけることになった。オレ達は好きなことは違うけれども、お互いのやりたいことを尊重して認め合っている仲の良い兄弟だ。
オレの部活が忙しいからなかなか時間が合わないが、試験の最終日とか部活が休みの時なんかは、時間が合えばよく一緒に出かけたりしている。
今までいろんな話をしてきたが、考えたら好きなひとの話ってあまりしたことがないように思う。
それなのに、オレの様子を見ただけで察してくれるなんて、流石は兄貴だ。
兄にはなぜかなんでも素直に話せる。
試験最終日、オレ達は映画を観に行くことになった。
まさかそこであんな出来事に遭遇するとは……。
お読み下さりありがとうございました。
次話「15 兄貴とお出かけ?」もよろしくお願いします!




