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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第9章 心機一転
138/148

138 春休みの部室にて      

 4月になってオレは3年生となった。

 そう。高校3年生になったのだ。


 受験もあるし、夏までは部活もある。


 いや。夏までしか部活がない。


 大好きな野球を少しでも長くプレイしたい。そのためには夏の甲子園を目指して精一杯頑張って、そして8月に甲子園で優勝する。

 早く負けるほど、野球をする時間が短くなる。

 なぜなら3年生は夏に引退するからだ。


 その後は勉強にいそしんで、目標の大学に入る。兄貴と同じ大学に。

 心構えも新たに、新学年を楽しもうと思う。



 もうすぐ入学式。新入生の初々しい制服姿が入学式には見られるだろう。

 今年の新入部員は何人集まるかな。今から楽しみだ。

 春休み前半はセンバツで汗を流し、後半は毎日朝から晩まで部活で汗を流している。今日の練習を終え、今から部室にてなにやらキャプテンから話があるらしい。


「全員揃ったな」


 キャプテンの言葉に返事をし、ワイワイと雑談をしていた声が静まる。



 入学式後のレクリエーションにて、各部活の代表者が「ぜひ入部を!」と、1人でも多くの部員を確保するため入学式に壇上で熱い思いを新入生に伝える、という時間があるのだが。その前に、入学式に在校生の代表として、野球部が挨拶をすることになったとのこと。


 毎年こんなことやってたっけ? と疑問に思ったが、どうやら春休みのセンバツ――所謂いわゆる春休みに行われた『選抜高等学校野球大会』で、我が姿薔薇紫すばらし高校野球部が全国32校の熱き戦いにて見事準優勝になったから、ということで、急きょ決まったらしい。

 しかもそのスピーチをオレにするようにって。


 それなら主将がすれば良いのでは? と部室でオレは頑張ったが、キャプテンは新入生勧誘の方でスピーチするから、そっちに力を入れて……ごにょごにょ。と、どうしてもオレに挨拶をさせたいらしい。


「ムリムリ」


「大丈夫だよ」


「いやいやいや、ムリだろ。オレはシャイなんだ。奥手なんだ。硬派なんだ」


 と訳のわからぬことを口走って、全力で拒否する。


「空はエースで4番打者。我が校のスターだから、みんな空のスピーチを聞きたいんだよ」


 キャプテンは笑顔で言う。


「キッパリとお断りします」


 そんな壇上で、オレは一体何を話せばいいんだよ。

 断固反対します!


「そこをなんとか」


「いや、でも」


「はい。決まり決まりー。入学式でのスピーチは空に決定しました!」


「え」


 オレはまだ引き受けてはいないですよ。

 それを何ですか、勝手に。


 さとしのひと言で、皆から「おー」という歓声と拍手が起こる。


「まったく……」


 あまり気は進まないが、満面の笑みでこんなに盛大に拍手をされると、これは仕方ないな、と観念した。

 オレは渋々「しゃーないな」の言葉とともに、大きな息を吐く。


 キャプテンの「以上でミーティングを終了する」との言葉に、それぞれ「お疲れさま」と部室をあとにする部員。オレも帰ろうと、立ち上がったところでかけられた言葉。


「明日のスピーチ頑張れよ」


 誰かの声に、驚愕する。


「え、入学式って明日かー」


 今からスピーチ考えられるのか?


 

お読み下さりありがとうございました。


今話より、『第9章 心機一転』に入りました。

次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 138 春休みの部室にて 読みました。 スピーチ! ドキドキしますね!( 〃▽〃) どんな感じになるのか楽しみです。
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