137 センバツ(3)
我が姿薔薇紫高校は、大会3日目の第2試合を皮切りに、順調に勝ち進んでいった。そしていよいよ決勝戦。
優勝する気満々で挑んだ決勝戦。
結果は準優勝だった。
オレは前回のように悔しいというよりも、情けなさを感じた。
それは“あと一歩”のところで優勝を逃してしまったからだ。
相手チームに、明らかに力の差を見せつけられての惨敗ならまだしも、競り合ってのサヨナラ負け。気分的に全く違う。9回裏、1対1の同点、2アウトランナーなし。相手は4番バッターだが、2ストライクまで追い込んだ。あと1球というところで気合いが入りすぎた。キャッチャーのサインに軽くうなずき、オレは渾身の力を込めキャッチャーミットめがけて投げる。
甘く入ったストレートをレフトスタンドに放り込まれた。
打たれた瞬間、目の前が霞む。それでも振り返りレフト方向への打球を目で追う。フライであってくれと、「入るな!」と念じるが、ぎりぎりフェンスを越えていく。オレは膝からその場に崩れ落ちた。悔しい。そう思った瞬間、なぜ投げきれなかったのか、同点のまま延長戦に持ち込めなかったのか、せめてフライでアウトに……。自分の力不足が情けなかった。
相手チームの喜ぶ声、観客のどよめきと歓声。全てが遠くで聞こえる。
チームメイトは「お疲れ」と、オレの肩をポンとたたく。
オレは「お疲れ」と唇を一文字に結ぶ。涙は出なかった。
校旗掲揚と校歌斉唱。
横に整列して相手校の校歌を聴く悔しさ。前回とはまた違った感情がこみ上げてくる。
皆と“甲子園の土”は少しだけ持ち帰った。去年の夏はまたここに戻ってくるために、持ち帰らずにいたが、今回は持ち帰ろうと思った。この悔しさを、情けなさを忘れないために。もう一度、今度は夏の甲子園に戻ってくるために。そして優勝するために。
センバツは準優勝ということで、地元ではよくやったと大騒ぎだが、悔しい。
今年の夏の甲子園で必ず優勝する。
この想いを胸に秘め、悔しさを力に変えていこう。
優勝は“勝ち取る”もの。
しかし準優勝は――――勝ち抜いての準優勝ではなく、負けての準優勝。純粋な『優勝』ではなく、優勝の前に『準』の文字が入る。
次こそ。
次こそ。
新年度が始まり、オレは3年生となった。
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