表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第8章 境目
133/148

133 とあるホワイトデーに

 バレンタインに愛優ちゃんからチョコをもらって、「ホワイトデー、楽しみにしてるね」「あんま期待せずに待っててくれー」と会話して。オレは今ここにいる。

 そう、ホワイトデーのお返しを愛優ちゃんに渡すべく、彼女の家を訪れたわけだが、ちゃんと渡せたし、そろそろ帰ろうかと思った時に、「さ、入って」だなんて。

 思いもしないお言葉に、オレの心臓は飛び跳ねた。


 いや、だが、しかし。


 あ、そうですか~。じゃ、遠慮なくお邪魔しま~す。


 なんて言えるはずもなく。


「もう遅いから……」


 と口ごもるオレ。


「どうしたの~? 空くん。遠慮しないで」


 と、満面の笑みを浮かべ愛優ちゃんに言われると、思わず言ってしまった。


「はい」


 なんだ? はいって。緊張のあまり、敬語になってしまう。


「ふふふ。素直でよろしい」


 オレは愛優ちゃんに促されるまま、彼女の家の玄関へ向かい、彼女に続いて中に入った。


「ささ、どうぞ」


 玄関で靴を脱いでスリッパを履くと、どこからか現れた彼女の“お母さま”に導かれ、リビングへと向かう。そしてリビングに入ると、食卓には豪華な料理が所狭しと並べられているのが目に入った。食事時に来てしまったのだろうか。迷惑だったかな。いや、でもまだ17時過ぎだ。夕食には早いだろうに。などと考えていると、聞き覚えのある声が耳に入った。


「よっ」


 その声の主を見て、オレは驚きを隠せない。


「え、なんで!?」


「“センバツ頑張ってね会”だそうだよ」


「ええー、そんな申し訳ない。てか、なんで兄貴がいるんだよ?」


「せっかくだから、海さんもお誘いしたの。皆で応援したくって」


 あ、愛優ちゃん。なんとお優しい。


「空くんにホワイトデーのお返しいただきました~」


 そう言って、さっきオレが手渡した紙袋を高々と上げ、愛優ちゃんは嬉しそうに皆に見せびらかしている。オレは耳まで真っ赤になっているだろうと推測できるぐらいには、恥ずかしいぞ。


「ヒューヒュー」


 兄貴の揶揄からかいに、ますます照れてしまう。


「まあまあ、それぐらいにして。空くんが困っているでしょう?」


 “お母さま”の鶴の一声に助けられたオレ。


 その後は、“お母さま”の手料理に舌鼓を打ち、和気あいあいと『センバツ頑張ってね会』を楽しんだ。“お父さま”も、穏やかな感じのいい人で、話も弾んであっという間に時間は過ぎた。


 皆にこれだけ応援してもらって、期待されているんだ。

 数日後に控えたセンバツ。頑張ろうと心に誓う。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 133 とあるホワイトデーに 読みました。 最高のホワイトデーですね! “センバツ頑張ってね会” ←そのまんまなネーミングがイイ!(^ー^)b
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ