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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第8章 境目
132/148

132 とあるホワイトデー

 センバツまであと数日に迫ったとある日。

 今日はホワイトデー。

 もちろん毎日練習はあるし、愛優ちゃんを誘って食事なんてできるはずもない。第一、もしそんなことになったら、食事中、練習のことが気になって、せっかくの愛優ちゃんとの時間を楽しむことができないだろう。

 今は目の前の目標に向かって精進するのみ!


 とは言うものの。


 愛優ちゃんからバレンタインデーにチョコをもらった時、「ホワイトデー、楽しみにしてるね」とのお言葉をたまわり、オレは「あんま期待せずに待っててくれー」と冗談めかして言ったが、お返しはキチンとせねばならぬ。しかしちまたではホワイトデーは倍返しなどという恐ろしい噂が囁かれている。

 元の値段なんて解んないのに、倍って言われても。

 そんなの気持ちの問題だと思うんだけどな。オレならそう思うけど。



 卒業式の日、さとしの誘いを断ってホワイトデーのお返しを買いに行ったオレは、何を買えばいいのかも解らず、あれやこれやと見て回り、最終的には自分が食べたいものを買ったわけだけど。だって、他人ひとにプレゼントするからには、自分が美味しそうだと思わないものを選ぶわけないだろ。喜んでくれると嬉しいな。


 今日の部活は16時まで。急いで帰って、一応汗を流して17時に愛優ちゃんの家に。前もって渡したいものがあると伝えておいたから、愛優ちゃんも察しはついているだろう。


 心なしかインターホンを押す指が震える。

 さとしや倉井たちと、皆で勉強をするために何度か訪れているはずなのに、愛優ちゃんの家に来るといまだに緊張する。見上げればそこには西洋の城がごとくそびえ立っている3階建ての家。大きな門構えの立派なお屋敷。

 緊張しているのはそのせいではない。

 愛優ちゃん、キミに会えるからだ。


 なんて物語の主人公のセリフみたいなことを頭に浮かべていると、愛優ちゃんが門扉を開けて出て来た。


「こんばんは」


 春なのに風鈴が音を奏でる。

 いや、愛優ちゃんの声だ。


「あ、こんばんは」


 オレは照れを隠し、「これ」とぶっきらぼうにお返しの入った小さな紙袋を差し出す。


「わ、ありがとう! ホワイトデー、覚えてくれてたんだ」


 明るい表情で受け取ってくれる愛優ちゃん。


「楽しみにしてるって念を押されたからね」


 冗談交じりに言うと、彼女は口許に手をやって、ふふふと笑う。


「好みが解らなかったから、自分が食べたいものにしたんだけど」


 うんうんと頷く彼女。


「ごめん。こういうの慣れてなくて」


「あけるの楽しみ~。 私のことを考えながら選んでくれたと思うと嬉しい」


 満面の笑みでそう言う彼女を、やっぱりオレはお慕い申し……。


「さ、入って」


 え?



お読み下さりありがとうございました。


次話も楽しんで下さると嬉しいです♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 132 とあるホワイトデー 安定の初々しさで……! 可愛いです……! ほっこりしますね。 二人には早く幸せになってほしいなぁ~と思うのですが、作品が終わると寂しいからゆっくり進んでほしいな…
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