130 センバツ前(1)
みんなで勉強した甲斐あってか、単位を落とすことなく無事に学年末テストを終えることができた。
しかも成績も少し上がり、兄貴と同じ大学への進学に一歩近づけたように思う。
このまま突き進んでいきたい。
4月からは高校3年生になる。受験が刻一刻と迫る中、やること、やりたいことが多すぎて時間がいくらあっても足りない。
そして春休みの大きなイベント。
『センバツ』に向けて、練習に励もう。
オレは試験休み返上で、トレーニングを始めた。
しかしそんな中、ふとあることが過る。
ホワイトデー。オレは愛優ちゃんに何を贈るべきか。
他のふたりと相談してみるか?
いや。いくら友チョコだったとしても、オレは心を込めたお返しを……なんて。
でも、一体何を贈ればいいのか。どうやって渡せばいいのか。
その日に待ち合わせるなんて、ちょっとわざとらしい気もするし。友チョコだし。
なんて。
まあ、まだ時間はあるし、ゆっくり考えようと思っていた2月の終わり。
卒業式が行われたわけだが。
学年トップの成績を誇る倉井は、在校生代表で送辞を。
学年2位でミス姿薔薇紫高校と謳われている愛優ちゃんと、甲子園でまあまあ活躍したオレは在校生代表として出席した。
他にも数名2年生が出席していたが、残念ながら悟は、在校生代表での卒業式出席者には選ばれなかった。
その悟が卒業式に出席するでもなく、登校していた。卒業式後オレ達3人が和気藹藹と廊下を歩いていると、突然目の前に飛び出して来たのだ。
「じゃじゃーん」
なんだそれ。
じゃじゃーん、って。
「きゃ」
びっくりした愛優ちゃんは、オレの後ろに隠れる。
「あ、卒業式に用などないのでは?」
そう言うと倉井は眼鏡の端を左手でクイッと上げる。
「まあ、そう言うなよなー。卒業式も終わったことだし、帰りにお茶でもしないかなーって」
悟はそう言うと、満面の笑みを浮かべた。
なんか嫌な予感がする。
「てか、なんで学校にいるんだ?」
オレが言うと、「まあ、いいからいいから」とニヤけ顔。
在校生代表以外は卒業式に出席しないので、必然的に学校に来ることはない。
用事もないのに、わざわざ来るとは意味が解らない。
愛優ちゃんも不思議そうな面持ちで悟を見つめているし。
他に何か特別な用事でもあったのだろうか。
「何か学校に用事でもあったのですか?」
そう聞いて、倉井は眼鏡の端を左手でクイッと上げる。
すると悟はすました顔で答えた。
「べつに」
て、悟。
もしかしてオレ達とお茶するためだけに、わざわざ来たのか!?
お読み下さりありがとうございました。
次話「131 センバツ前(2)」もよろしくお願いします!




