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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第8章 境目
127/148

127 とあるバレンタインデー

「じゃあ、お先~」


 そう言ってさとしは教室から出て行った。

 入れ替わるように愛優ちゃんがオレの方へとやって来る。


そらくん、お疲れさま。テストどうだった?」


「あ、愛優ちゃん。お疲れ~。まあまあかな」


「もう帰る?」


「あ、うん」


「じゃ、一緒に帰ろ」


 わ、今日はふたりでってことですか!?

 いつもは試験終了後、教室に残って、オレと愛優ちゃんと悟と倉井の4人で次の日のテスト勉強をしていたが、今日でそのテストも無事終了。もうテスト終わりの勉強会もない。オレは明日からまた部活がはじまるし、せっかくふたりで帰るなら、今日はカフェにでも寄りたいな。って思うけど。


「ああ」


 ついこんな言い方になってしまう。

 もういい加減慣れろよって話なんだが、こればっかりはしょうがない。


 オレと愛優ちゃんは帰り支度を終え、一緒に教室を後にする。

 真っ直ぐに続く廊下をひたすら正面を向いたまま歩いて行く。


 別に気まずいわけでもないのに、なぜか沈黙のふたり。

 おかしいなぁ。今日は愛優ちゃんまで無口だ。


 下駄箱の前で立ち止まるふたり。


 無言のまま靴を履き替え、また歩き出す。


 校門を出てしばらく、冷たい風が頬をなでる。


「寒っ」


 思わず声が出る。


「ホントに」


 なんか、いつかの会話みたいだけど。


 そのまま歩いて公園の前にさしかかった。その角を曲がればあの雨やどりをした軒先がある。

 季節は違えど、ふたりで通るとあの時のことが蘇る。


 いよいよその軒先の前まで来たところで、愛優ちゃんが足を止める。


「ん? どした?」


「ここで雨やどり」


「うん」


「覚えてる?」


「ああ」


「懐かしい」


「そうだな」


 愛優ちゃんはほんのり頬を染めて、カバンの中から何かを取りだした。


「はい、これ」


 そう言って手渡された包み。


「え、なに?」


 オレは受け取った可愛らしい包装紙を見て、今言った言葉を飲み込みたかった。


「あ、チョコ」


 彼女に言わせてしまうなんて。オレのバカバカ。


「サンキュ」


 いたって平静を装ったが、こころの中は大騒ぎ。

 心臓は元気よく跳びはねるし、冬なのに汗は滲んでくるし。

 これは紛れもなく、バレンタインデーのチョコだ。


 どう解釈すればいいのだろうか。

 まさか告白なんてことはないだろうし。

 友チョコか? 義理チョコか?


 まあ、なんでもいいや。

 愛優ちゃんからチョコをもらえたという事実に変わりはない。


 彼女はにっこり微笑んで言った。


「ホワイトデー、楽しみにしてるね」






お読み下さりありがとうございました。


次話「128 とあるバレンタインデーに」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 127 とあるバレンタインデー まで読みました。 ボケに回る空くんがコミカルで面白いですね! ちょっぴり浮かれている生徒がいるところもリアルな感じで良かったです。(^o^)
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