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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第8章 境目
126/148

126 好きなひとに

 テスト終了後。教室で女子がやけに騒いでいるのが聞こえてきた。というか、かなり盛り上がっているようだけど。

 オレは何事かと、その女子たちの方に目を向ける。


「がんばって」


 そう言われた女子は、恥ずかしげにうなずいて、手に持っていた可愛らしいデザインの紙袋を大事そうにギュッと胸に抱きしめた。


「じゃ、行ってくる」


 そう告げて教室を出て行く彼女に、他の女子は手を振り見送っている。


 オレはなんのことやらと小首をかしげていると、後ろからさとしが声をかけてきた。


「あの紙袋の中には、きっとチョコが入ってんだよ」


「チョコ?」


 聞き返したオレに、悟は「空はいくつもらった?」と聞いてきた。


「は?」


「毎年どっさりと貰ってるだろ?」


「どっさりと。 なにを?」


「空、女子から人気あるからなぁ」


「そんな気しないけど」


「謙遜しなさんなって」


「いや、してないよ。事実だし」


「またまた~。高身長でイケメンの上に運動神経抜群。野球部のエースで4番。ちょっととぼけたところはあるけど、成績優秀で性格も言うことなし。モテないわけがない。オレが女子なら間違いなく惚れてるな」


 そう言って悟は笑う。

 オレもつられて笑ったけど。


「からかうなよ。そんな褒めてもなんもでないよ。てか、ちょっととぼけたところはあるけど、ってなんだよ」


 悟は「まあまあ」とオレの肩をポンと叩いた。

 今まで女子からどう思われてるかなんて気にしたことなかったから、悟のセリフがちょっとこそばゆい。



「オレなんて皆無かいむだよ」


 ふうとため息をつきながら悟は言う。

 だけど。


「さっきからなんの話してんだ?」


 全く話が見えない。


「マジで言ってんの? 今日はなんの日かってことだよ」


「今日はなんの日って……なんかあったっけ? 学年末試験中としか」


 オレの言葉に悟はやれやれと、大きなため息をついた。


「ったく。空は野球のこと以外はマジ無頓着だよな。年に一度、女子からチョコを渡して……」


 そうか。今日は2月14日。バレンタインデーなんだ。すっかり忘れていた。

 って、オレには関係ない行事だけど。

 まあ、毎年どっさりとまではいかないけど、野球部というブランド力のおかげか、チョコをくれる女子は数人いた。

 だけどオレは野球と音楽以外のことにはあまり興味がなくて、誰かと付き合うことはなかった。


「なるほど」


「てことは、今年はまだチョコもらってないのか?」


「もらえるとも思ってないけど」


「またまた。モテる男の余裕ってやつか?」


 悟は笑いながらそう言うけど。


「一度はモテてみたいよ」


 そう。好きなひとに。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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