表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第7章 岐路
118/148

118 大事な局面(3)

 愛優ちゃんは満面の笑みで目の前に置かれたチョコレートケーキの三種盛を見て、両手を合わせ「いただきま~す」と元気よく発し、フォークを手に取り、どのチョコレートケーキから食べようかと3種類を見比べている。


 オレはその様子を微笑ましく見ながら「いただきます」と両手を合わせる。


「空くんって、ちゃんとしてるよね」


 愛優ちゃんの言葉に「何が?」と返す。


「だって礼儀正しいし正義感が強いし優しいし思いやりがあ……」


「ちょ、ちょっとやめてよ。そんなに褒めても何も出ないよ」


 オレは恥ずかしくなって愛優ちゃんの言葉を途中でさえぎった。


「まだ続きがあるのに~」


 そう言いながら愛優ちゃんはケーキをパクリと頬ばる。


「ん~。おいしー」


「じゃ、オレも」


 とイチゴのショートケーキにフォークを入れ、口に運ぶ。


「うわっ。うまい」


 シンプルなケーキほど美味しさが際立つわけで……って、評論家のようなことを考えていると、「でしょ~」と嬉しそうに愛優ちゃんが言う。


 ああ、なんて楽しいクリスマス・イヴなんだ、とオレの口元もほころぶ。




「ねえねえ。次はどのケーキにする?」


 とメニューを差し出してくる彼女。


「え、もう食べたの?」


 オレはまだイチゴのショートケーキを半分しか食べていないのに、愛優ちゃんはチョコレートケーキの三種盛をペロリとたいらげていた。


 ふふふと笑いながらも、真剣にメニューとにらめっこする姿は可愛くて。


「ん?」


 ジーッと彼女がオレを見つめている。

 どうしたんだろう。

 なにかマズいことでも言ったか?

 いや、さっきまで楽しく過ごしていたはず。


「どうしたの?」


 オレがたずねると、「だって」とひと言。

 どうやらオレがケーキを食べ終わるのを待っていたらしい。


「気にしなくても、先に次のケーキ注文してて。オレも食べ終わったら次の頼むから」


 オレの言葉を聞くとニッコリと笑い、次のフルーツケーキをオーダーしていた。


「フルーツケーキかぁ。美味しそうだね」


 オレがそう言うと、しっかりオレの分まで注文してくれるなんて。

 

 フルーツケーキが運ばれてくるまで、オレと愛優ちゃんはなぜか宿題の話に花を咲かせていた。

 まだ冬休みが始まったばかりだから、そんなに気にすることもないかもしれないけれど、前半に終わらせてしまって、後半はゆっくりと過ごしたいというのがふたりの意見。


「だよね~」


「だな」


「じゃあさぁ。明日から一緒に宿題しよっか」


「へ?」


 突然の愛優ちゃんの申し出に、オレは高めのヘンな声で返してしまった。

 それを受けて愛優ちゃんはケラケラと笑っている。


「それとも、なにか予定でもある?」


 いえいえ、まさか。

 てか、たとえ予定があったとしても、なんとか調整して愛優ちゃんと宿題がしたいと思うわけで。

 オレはブンブンと首を横に振った。


「じゃあさぁ。明日は私の家で宿題しよう。次の日は空くんのお家で。宿題ができるまで頑張ろうね」


「お、オッケー。頑張ろうぜ」


 な、なんと嬉しきかな。



お読み下さりありがとうございました。


次話「119 大事な局面(4)」もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ