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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第7章 岐路
114/148

114 高校野球秋季大会(1)

 10月のはじめ、『高校野球秋季大会』の都道府県大会が始まった。

 夏の甲子園に出場したチームなんだ。1回戦で負けるわけにはいかない。と、オレ達は妙な自信を持ち、そのおかげか順調に勝ち進み、いよいよ決勝戦。


 今まで頼りにしていた3年生が引退した後1、2年生による新チームで挑むはじめての大会であったので、いささか緊張はしたが、先輩たちに恥ずかしくないような試合をしなければ、とオレ達はとにかくそれを考えて頑張った。


 今日勝てば地区大会だ。

 はやる気持ちを抑え、オレ達はベンチで試合開始を今か今かと待ち構えている。


 いよいよその時がきて、両チームのベンチから飛び出して来た選手達がホームプレートをはさんで並び、審判の合図で両チームとも、帽子をとり、「お願いします!」と発する。


 気を引き締めて、後攻のオレ達は守備位置につく。

 オレはピッチャーマウンドに立ち、大きく深呼吸をした。


 球場に響くサイレンの音ととともに大きく振りかぶって、第1球目を投げる。


「ストライーク」


 審判の声が響く。


 初球をストライクで決められたことで、オレは緊張がほぐれて、その後は自分でも驚くほどの良いピッチングができたと思う。


 ベンチ入りできなかったチームメイト、スタンドで応援してくれる仲間たちや家族、応援歌を歌いメガホンを片手に、手のひらに打ちつけて応援してくれるみんなの思いを、ボールに乗せてキャッチャーミットをめがけて投げた。




 試合は進み、オレ達のチームの一方的な展開になっている。

 オレはネクストバッターズサークルで素振りをし、ピッチャーが投球するのに合わせてバットを振り、投手のタイミングをはかる。


 2アウト1、2塁。オレまで打順が回るか、微妙なところ。

 打ってくれよと、願いながら素振りをしていた。

 と、そこでパスボール。相手のピッチャーも相当なプレッシャーだったのだろう。ワンバウンドで投球がキャッチャーミットに当たって、後ろにそれていったのだ。

 その間に2塁から3塁、1塁から2塁にそれぞれ走者は進む。


 その後フォアボールで、オレに打順が回ってきたときには、2アウト満塁。

 ここでヒット、欲を言えばホームランといきたいところだが。


 オレは気合いを入れ、打席に立つ。

 4番バッターの責務を果たすべく、集中して挑んだ。


 狙い球がきたので、迷わず振った。

 カキンと快音が響き、打球はどんどん伸びていく。


 ベンチのみんなが、「入れ、入れ!」と口々にいう声が聞こえる。


 入った!

 ホームランだ。


 オレはゆっくりとベースを1周した。


 結局この試合はオレ達のチームが勝利し、都道府県大会優勝となった。


 試合終了のサイレンが鳴る。




 オレ達の学校――姿薔薇紫すばらし高校の校歌が流れ、みんなで歌う。

 この校歌斉唱で勝った実感が湧き、胸を熱くする。


 その後、選手はスタンドのお客さんの前に整列し、キャプテンの「礼!」と言う声でお辞儀をする。

 客席からは惜しみない拍手。

 嬉しさが込み上げてくる。


 それから道具を片付け、球場から出るときには、オレ達はクルッと回れ右でグランドを向いて「ありがとうございました!」と礼をする。


 その後グランド整備がされ、お客さんはスタンドのゴミを拾うのが暗黙の了解のようで。

 高校野球の球場は、みんなの心づかいで綺麗に保たれているのだ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「115 高校野球秋季大会(2)」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 114 高校野球秋季大会(1)まで読みました。 大会、今のところは順調に進んでいますね! これから何かが起きるのか、このままひたすら勝ち進むのか、気になるところです。(^-^)
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