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どんどん人魚どん  作者: 路世 志真
2/16

人間になるどん!



地底の魔女を訪ねると、人魚どんは魔女にこう言いました。

「おいどん、魚になりたいどん!」

「ああ、それなら古いけど魔法の薬があるよ。あんたは魚になるのかい?」

「魚になって、漁港へ行って売り出してもらうどん!」


魔女は首を傾げて言いました。

「あんたは魚になって食べられたいのかい?」

「食べられる?」

「漁港は人間が食べる為に魚を売り出す所だよ?歌を聞くためじゃないよ。」


人魚どんはショックを受けました。魔女は人魚どんの様子を見て訊きました。


「一体誰にそんな事を聞いたんだい?」

「サメのおじさんに……」

「あはははは!おばかだねぇ!それは冗談だよ!サメのやつにからかわれたんだよ。」


冗談だとは知らずに漁港に行っていたら大変な事になっていました。


しかし、人魚どんは泣き出しました。

「おいどん、どうすればいいどん~?」

「おやまぁ…………じゃあ訊くけど、あんた、完全な魚にも完全な人間にもできるけれど、どっちの世界で歌手になりたいんだい?」

「どっちの世界…………?」


人魚どんはそんな事、考えた事もありませんでした。ただ、漁港に行けば演歌歌手になれると思っていたからです。


「あんたはまだまだ半人前。まずは一人前にならなきゃいけない。」

「一人前ってどうすればいいどん?」

「まずは完全な人間になる事だね。」


魔女の魔法の薬を飲めば、一人前になれるのでしょうか?


「じゃあ、海の中で魚になって、音波歌手になるかい?」


音波歌手?イルカやジュゴンの発する超音波の事でしょうか?人魚どんは驚きました。

「でも、おいどんは音波歌手じゃなくて、演歌歌手になりたいどん!」

「それなら、人間になるしかないじゃないか。」


魔女にそう言われ、人魚どんは決心しました。


「なら、おいどん、人間になるどん!」


魔女はうんうんと頷いて、ホコリの被った魔法の薬の瓶を、棚の奥から出して来ました。


「いいかい?人間になったら、まず行くのは漁港じゃないよ。プロダクション、芸能事務所に行くんだよ?」

「そこへ行けば売り出してもらえるどん?」

「運が良ければね。」


魔女は薬の瓶の蓋を開けると、人魚どんに差し出しました。


「それと、この薬は最初の1週間は人間でいられる。だけど、1週間過ぎても成果がなければ、泡になって消えるんだ。」

「成果とは?」

「王子を落としたいお姫様なら王子のキス。演歌歌手になりたいなら…………観客の拍手とかじゃないかね?」


「それなら、ずっと人間でいられるために、拍手をもらうどん!」


こうして、人間になる事を決めた人魚どんは、魔女にもらった薬を飲みました。


すると、たちまち人魚どんは、どんどんどんどん人間になってゆきました。



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