息が苦しいどん!
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どんどんが陸を探しに行こうとすると、陸の友達が訪ねて来ました。
「どんどん!?本当にどんどんなの!?」
それは、リハビリセンターにいた辰義少年でした。辰義少年はどんどんに驚きました。どんどんも驚きました。辰義少年はすっかり歩く事ができていました。
どんどんは辰義少年と一緒に、陸を探しに行く事にしました。
「おーい!陸~!」
陸は海辺にいました。辰義少年が陸を見つけて叫ぶと、岸壁にいた陸は足を滑らせて、海に落ちてしまいました。
「陸~!陸~!」
辰義少年とどんどんは陸の名前を何度も何度も叫びました。しかし、陸はなかなか水面にあがって来ません。
どんどんは思わず、海に飛び込みました。
しょっぱい海の塩水は久しぶりです。
「どんどん!!」
どこかで、そう名前を呼ばれた気がしました。
呼ばれた方を見ると、陸がいました。どんどんは何とか海の中で陸を見つけましたが、陸は気を失っていました。
人間のどんどんにはエラもヒレもありません。どんどんは人間の足で泳ぐ事はできませんでした。
こうして陸とどんどんは、どんどんどんどん海の底に落ちて行きました。
海の底には、どんどんに人間になる薬をくれた魔女がいました。
「おや?人間になったのに、どうしてここへ来たんだい?」
「陸を助けて欲しいどん!」
水の中では息ができません。このままでは死んでしまいます。
「それなら泳いで水面に上がればいいだろう?」
確かにそうかもしれません。でも、どんどんは今すぐ泳げるようにはなりません。今すぐ人魚の姿に戻れば違うかもしれません。
しかし、どんどんは人魚に戻りたくはありませんでした。人魚に戻れば、また食べられるかもしれない。陸で歌を歌う事もできません。
すると、魔女はこう言いました。
「助けてもいいよ。その代わり、お前はあたしに何をくれるんだい?」
息がどんどんどんどん苦しくなりました。どんどんは考えました。どんどんは何を与えられるでしょうか?
陸を探す間、辰義少年とこんな話をしました。
「どんどんは……聞いた?陸のおじいさんが死んじゃった事。」
「さっき聞いたどん。」
辰義少年は辺りを見回しながら言いました。
「僕、陸のおじいさんみたいな人になりたいって思ったんだ。」
どうしてでしょう?おじいさんは演歌歌手ではありません。
「僕、おじいさんに訊いた事があるんだ。どうしてそんなに親切なんですか?って」
確かに、おじいさんは親切な人でした。
『自分は今まで沢山の人に与えられて来た。だから、自分も与えられる人になりたい。』
どんどんはその言葉に、今までのたくさんの事を思い出しました。
砂浜で陸に拾われ、リハビリセンターで歩く練習を手伝ってもらいました。陸の家では、おじいさんに演歌を聞かせてもらい、お姉さんにイヤホンをもらいました。お父さんの捕ったお魚を、お母さんが料理し、毎日美味しいご飯を食べさせてもらいました。それに、水族館の館長や社長のおじさん。
どんどんは、与えられてばかりです。そんなどんどんは何を与えられるでしょうか?
どんどんは、どんどんどんどん苦しくなりました。




