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どんどん人魚どん  作者: 路世 志真
11/16

デビューどん!


11


水族館を抜け出したどんどんは自由です。自由ですが、何もありませんでした。


寒さをしのぐ服も、足を守る靴も、空腹を満たす食べ物も。当然お金も、遠くへ行く術も、何もありません。


どんどんは、とにかく海の方へ走って逃げました。途中で足が痛くなりました。息が切れて喉が渇きました。それでも、無我夢中で走り続けました。


しかし、どんどんにはわかりません。どの道が海に続くのか、陸の家はどの方向なのか、どんどんには全くわかりませんでした。


とうとうどんどんは立ち止まり、道の片隅で座り込みました。寒さに震えて、小さく丸くなりました。


すると…………目の前で車が止まり、

知らないおじさんがどんどんの目の前に立ちました。


「やぁ、水族館で歌っていたのは君だね?」

どんどんはおじさんを見ると黙ってうなずきました。そのおじさんは水族館の館長とは別のおじさんでした。


「君、もっともっと多くの人に歌を聞いてもらいたいとは思わないかい?」

「え?」

どんどんは驚きました。初めて陸に上がった時のように、警察という所へ行くのだと思っていたからです。


「実は、私はこうゆう者なんだよ。」

おじさんはどんどんに小さな紙を渡して来ました。どんどんは受けとると、その紙を眺めた後、少しは寒さがしのげるかと、その紙を裸の体に貼り付けました。しかし、紙はすぐに剥がれ落ちました。


その紙には、芸能事務所社長と書いてありましたが、どんどんは字が読めません。


「どんどん、海に帰るどん。海に帰って……もう一度魔女に薬をもらうどん!」

そう言ってどんどんは立ち上がりました。


するとおじさんはこんな事を訊いて来ました。

「その薬があれば、人間になれるのかい?」

「そうだどん!薬の効果は1週間だけどん。でも、その後は拍手をもらい続ければ、ずっと人間でいられるどん。」


どんどんに、おじさんはさらに訊きました。


「どうして人間になりたいんだい?」

「おいどん、演歌歌手になりたいどん!」


おじさんは何度もうなずいてどんどんに言いました。


「私についてくれば君はずっと人間でいられるよ。」

「本当どん!?」

「本当だよ。」


その後、おじさんはどんどんに車に乗るように言いました。車の中は暖かくて、まるで海のようでした。


それからどんどんは、社長さんにどんどん売り出され、どんどん歌い、どんどん拍手をもらいました。


こうしてどんどんは、どんどん有名になってゆきました。


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