漁港へ行くどん!
子供向けには書いていませんが、残虐な感じにはしないようにしようと思います。
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ここは、とある漁港近くの海の中。そこには、上半分人間、下半分魚の人魚が住んでいました。
人魚というのは、可愛らしいお姫様のイメージがあるとは思いますが、そこに住んでいる人魚は違いました。
お姫様ではなく、まるでゴリラのような体、顔は眉毛の繋がったゴリゴリのおじさんでした。
その人魚は、海の仲間達から『人魚どん』と呼ばれていました。
そんな人魚どんは、鹿児島生まれの薩摩隼人。歌が大好きで、演歌歌手になるのが夢でした。
人魚どんは、どんどんどんどん夢を膨らませ、どんどんどんどん陸に向かって泳いで行きました。
途中で水面に出て、自分のいる位置を確認していると、ウミネコの親子が人魚どんに話しかけてきました。
「人魚どん、どこへ行くの?」
ウミネコの坊やが訪ねました。
「演歌歌手になるために、漁港へ行くどん!」
「ギョコウ?ギョコウって何する所なの?お父さん。」
ウミネコの坊やはお父さんウミネコにそう訊きながら、首をかしげました。
「釣られた魚が行く、天国だよ。」
ウミネコのお父さんは坊やにそう説明しました。そして、一つ重要な事を人魚どんに教えてくれました。
「人魚どん、漁港へ行っても演歌歌手にはなれないよ。」
しかし、そう聞いた人魚どんは、やっぱり堂々と胸を張って言いました。
「でも、漁港は魚を売り出してくれると聞いたどん!」
ウミネコのお父さんは少し困ってしまいました。
「それは…………魚はね。でも君は、半分人間じゃないか。」
確かに、人魚どんは半分人間です。
「それなら全部魚になるどん!」
「どうやって?どうやって全部魚になるの?」
ウミネコの坊やは人魚どんに訊きました。
「わからないどん!」
人魚どんは、どうやって魚になるのかまではわかりませんでした。
ウミネコのおじさんは人魚どんの話を聞いて、いいことを教えてくれました。
「地底のアクアシティに住む、魔女の所へ行ってごらん。魔女が大昔、人魚を人間に変えたって話を聞いた事があるよ。」
「魔女!?おいどん、さっそく地底に行ってみるどん!」
ウミネコのお父さんにお礼を言って、人魚どんは地底に住む魔女の元へ行きました。