猛獣より獰猛
それから俺たちは刑務所あるあるや死刑囚あるあるなど他愛のない会話をし時間を潰した。
「所であんた。」
「ん?なんだ?」
「名前...」
「名前?」
「いや、いつまでも番号じゃ呼びにくいかなと。」
「お!俺の名前に興味を持ったか!俺は達也って言うんだ。お前は?」
「俺は高岡 仁って言うんだ。」
「じゃあ仁でいいな!改めてよろしくな!」
「...なあ一つ質問いいか?」
「ん?なんだ?」
「この施設はなんなんだ?」
仁は不安を感じていた。最初は死刑が免除になる事ばかりに気が行きこの施設についてどうでもよかった仁だったが、普通に考えてみれば極刑を言い渡された人間がやすやすと死刑という苦痛から解放されるはずがない。仁はこの施設で自分はどうなるのか不安だった。
「最初に言われなかったか?ここにいる化け物の実験に付き合わされるんだよ」
「化け物?猛獣とかの研究に付き合わされるのか?」
「猛獣ねぇ〜。猛獣より厄介な奴らだな...」
「そんな獰猛な奴の実験に付き合わされるのか!?」
「あぁ、まるでこの世の不条理を集めたような奴らだ。そんな奴らから人類...いや地球を守るために活動してるのがこの施設ってわけだ!...あれ?」
「ん?どうした?」
「...ん?あぁなんでもない。」
「ところで、どんな実験に付き合わされるんだ?」
「それは順番が回ってきてからのお楽しみだな!まぁ楽しみにしてろよ!」
「全然楽しみじゃねえよ...」
猛獣よりも危険な奴らの実験に付き合わされると聞いて血の気が引いていた仁をよそに房の扉が開いた
「食事の時間だ、出てこい。」
この施設で始めての飯の時間が始まった。