七、想い
星空は、輝きを増していた。
【緑の丘】は、今日も優しく、街を見渡す。
優しく…。
「うぅ…、うわぁああん…。」
「ハァハァ…。」
「何で!?何で助けるのよ…!」
「勝手な…、事、するな、ハァ…。」
「うぅ…。」
「俺は…、植野に頼まれたんだ。」
結城は自分の気持ちに、気付いていた。「由紀乃の、心の…、支えになって…。」
雨が強くなる。
「そう、頼まれたんだ。」
由紀乃は、俯いたまま、泣いている。
「こんなに想ってくれる、友達がいるんだ。お前は、一人じゃない…。お前は何も悪くないんだ。」
「私…、入学式に、周りに男の人が、いっぱいいて…、思いだしちゃって…。あの、怖い感覚を…。」
「なぁ…、由紀乃。」
「あれ?…。姫野じゃないんだね。」
「これからは、由紀乃のこと、俺が守っちゃダメかな…。」
由紀乃は泣き止んでいた。
「私、こんなに…、嬉しい気持ち、知らなかった…。」
由紀乃は右手の、荷物の中から、ウ゛ァイオリンを取り出した。
由紀乃は、ウ゛ァイオリンを弾きはじめた。
「綺麗だ…。この夜空よりも…。」
その音色は、どこまでも…、どこまでも、響き渡った。
それは、雨上がりの空のでき事だった。
「由紀乃、好きだ…。」
結城は、自分の方へ、由紀乃を引き寄せると、やがて深いキスに…、二人の時間は止まっていた。
「帰るか。」
「うん。」
二人は、この日はじめて、自分の気持ちに向き合うことができた。
由紀乃は、自分の過去に打ち勝った。
由紀乃は幸せだった。そう…、今は…。
〜プルル♪
「もしもし?俺だよ。由紀乃?」
この電話から、物語は、大きく傾くことになる。