五、クラスメート
キーンコーンカーンコーン♪
「ふぁ〜、疲れたー。」
これで、帰れるぜ!
「今日の練習は、終わりだ!」
ったく、顧問の上田、厳しくって…疲れる。
「解散!」
「ありがとうございました!」
「あぁ、また親父に怒鳴られる、かも。」
あれ?植野だ。
「アイツなら…。」
「だから!あたしは、知らないって、結城君?ちょっと、聞いてる?」
「姫野は、何で元気ないんだよ…。」
「ちょっと、また聞いてない…。その質問3回目だよ?」
「!…、そうか。悪かったな。」
「結城君?大丈夫?」
「あ、ああ。」
「結城君…は、何で由紀乃のために、そんなに熱くなってるの?」
「そりゃ、一応クラスメートだから…、…。」
「ふぅん。」
クラスメートだから…。本当の気持ちが、別にあるのか?俺は…。
「実はね、由紀乃は、男の人がちょっと苦手なの。」
「えっ?」
「これは、由紀乃に、口止めされてたんだけど…。」
「苦手って、どんな風に?」
「近くに居られないって、感じ…なのかな。」
「俺とは、しゃべってたじゃないか!」
「うん…。あたし、直の誕生日の日…、由紀乃に学生証、届けたとき、由紀乃を誕生日に誘わなかったんだ…。」
「あぁ…。」
「由紀乃ね、直も、ダメみたいなの。」
「…。」
「でもね、結城君だけは、大丈夫みたいなの。」
「え?」
「だから…、あなたなら、由紀乃の、心の問題だけど…、結城君なら、少しでも、由紀乃の心の支えになってくれるかな…、って…。」
「…。」
「あたし、思ったんだ…。」
二人は黙ったまま、空を見ている。
雨が降ってきた。
「俺、由紀乃の力になれるか、分からないけど…。」
「はいっ、傘!」
植野梨佳、悪い奴じゃないな…。
「行ってくる。」
結城の言葉には、力強さと、優しさがこもっていた。