二、鈴川結城2
「あぁ、試合終わっちった。」
親父の命令は絶対。…なんだよな…。
「全く、…。」
眠くなってきたなぁ。
「よし!寝るか!」
「結城〜、晩ご飯よ。」
行かねぇ。親父がきても行かねえ。
寝てーんだよ…。
ギュルルルル…。
結城のお腹は嘘をつかないようだ。
「くそっ!」
ギュルル…。
「母ちゃん、今行く。」
結城は階段をものすごい速さでかけていった。
二人が初めて会話した日。天気は曇りだった。
「やべぇ!寝坊したぁ!」
「パン食わえてどこ行くの?」
「学校だよ!」
「あら、今日日曜よ。」
結城の耳には、届いていなかった。
「ふっ…。もう最悪。」
今日、日曜じゃねえか。
「もう…。私ったら、今日日曜じゃん。」
お、おいまさか…。
「姫野じゃん!」
「え?」
「何だよ、今日日曜だぜ。」
「鈴川君こそ、私と同じみたいね。」
「違う違う!これは、その…。」
「あ〜あ、高校って、土曜日もあるから…、日曜もあるかなぁ、って、勘違いしちゃった。」
俺もだ。
「へ、へぇ〜…。俺は朝のジョギングだぜ。」
(鈴川君の声、震えてる。ふふ。)
「何だよ、にやにやして!」
「別にぃ、…。」
「じゃ、俺は帰っからな。」
「私も。」
ふ〜。恥かくとこだったぜ…。
「それと、鈴川君?」
「ん?」
「嘘が下手だぞ!制服で、ジョギングする人がいるの?」
げっ!バレた…。
「最初から知ってたなぁ…。」
あれ?もう行っちゃったか。
「何だこれ?」
【姫野由紀乃 1993年6月6日生まれ 音楽部所属 宇山高校一年B組】
「あっ!アイツ、これ、学生証じゃん。落としたのか。」
アイツ、由紀乃って名前なんだ…。
「音楽部…か、俺と真逆だな。」
って、俺も帰んなきゃ!姫野のせいで時間くっちまった。
「はぁ…。」
結城は、走りだした。