一、鈴川結城
「お前、ホントにすげぇな!」
「そんなことねえって…。」
だるい。コイツといると疲れる。
「あはは☆」
俺、鈴川結城。
っと、隣のコイツが、竹内直。…。
コイツが問題なんだよなぁ。
「今日もサッカーで、一試合で4得点!」
「だから!たまたまだっつーの。」
「ほら〜、あんたたち!」
直の彼女だ…。
2倍めんどい。
「梨佳〜☆」
「ちょっと〜、ギリギリで宇山高、はいったんだから、直は勉強しなさい!」
植野梨佳。お節介女。今日もテンション高ぇ…。
「もう一度言うわよ…、直は勉強しなさい!」
「うわっ、それ言うなよ〜。」
「俺、だるいから帰るわ〜。」
「分かったぜヒーロー♪」
「結城君、また明日ねぇ。」
ようやく解放された…。
「はぁ…。家まで遠いなぁ…。」
ホントはそんなんじゃなくて、帰りたくないだけ…なんだよな。「あれ?あれは…。」
門の前にたってんの…。
同じ一年の…。てか!同じクラスの奴じゃん!
確か…。姫野?…。だっけ。
「まぁいいか。」
「ぶ〜ん♪」
「痛っ!」
なんだコイツ?
小学生か。
「あれれ?お兄ちゃんゴメンね。」
「ちゃんと前見てあるけよ?」
「はぁい♪」
「あっ!達也!」
姫野?いつの間に。
「あんた確か…。鈴川君?」
「あ、ああ。」
やべぇ、早く帰んねえと。帰りたくねえけど。
「達也、お兄ちゃんに謝った?」
「うん♪」
「鈴川君、ゴメンね。」
「いや、いいけど。」
やべぇ俺、露骨に早く帰りてぇ…って顔してる。
「じゃ、またね。」
「おう。またな。」
てか、初めてしゃべった…よな。
「バイバイ、お兄ちゃん。」
「またな。」
急げ俺!
「ゼェ…ハァ…、た、ただいま…。」
「あら、おかえり結城。」
急げ急げ。
「お風呂入ってよ、結城。」
「ゴメン、急いでっから。」
「何よ…、あの子ったら。」
ふぅ、間に合った。
これが観たかったんだよ♪
「〜えぇ、今日の試合は、日本対トルコ。見ものですね。〜」
「トルコか、日本負けん…」
「コラ!結城!」
!…、何だよ。
て、まさか…。
「親父!」
俺の帰りたくない理由。怒鳴る親父…。
「母さんが風呂に入れと、言ってるぞ!早く行きなさい。」
「…。了解…。」
俺の娯楽の時間が…。