九、それから…
……ドクン…
…ドクン…
ここは、どこだ…?
俺は…、誰だ…?
思い出せ…。思い出せ!
誰かが呼ぶ声が…、聞こえる。
「……!起…よ…!」
「…結…城!」
そうか、俺は…。
全部、思いだした。
ここで、こんな真っ暗な…、ところで、寝ている場合じゃない…。
守らなくちゃ、いけない人が、いるんだ。
俺の身体…、言うことを聞け!
何でだ…。
身体が、言うことを聞かない…。
声が、段々遠くなっていく…。由紀乃…。
…ドクン……ドクン…
…ドクン…………ドクン…………………ドクン…………………………
「結城いぃ!!!!!!!!!!!!!!」
「御臨終です…。」
「うわああああぁぁぁああぁわぁあ!」
「何で…、何でだよ…。」
「結城君、…。嘘…なんでしょ…?」
この夜、由紀乃だけが、結城の傍を離れず、一生で最大の量の涙を、流した。
そう…、まるで、そこに雨が降ったように、…。
それから、数年後…。
「ねぇ、見て〜。お母さん。」
「なぁに?結衣?」
「今日も、あのお姉ちゃん、彼処に座ってる。何してるのかな〜?」
「人は、皆ね、辛いとき、嬉しいとき、悲しいとき、楽しいとき、あんな風にするんだよ。」
「ふぅん。あんまり分かんないや。行こ、お母さん。」
「梨佳、またここに、きてたのか。」
「直…。うん…。」
「あれれ?お母さんも、お父さんも、みすてりぃな感じだね〜。」
「また結衣、どこでそんな言葉、覚えたの?」
「幼稚園だもーん。」
「そう。」
「行こうか。梨佳、そっとしておいて、あげよう。」
「そうね…。」