表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

4. 吸い込まれる場所

 学校の連絡網を次の人に回してしまうと、母さんが起きてきた。「おはよう、雪子」

「おはよ、母さん。今連絡網回したところだよ」

「そう、あらあなたそうめん食べたの?」

「そうだよ」

「朝からそうめんは感心しないわね。もっと栄養あるもの食べなさい。あなた風邪引いてるんだし」

「だってそうめんが食べたかったんだもん!」

「風邪薬は飲んだ?昨日あなた薬局に行ったみたいね。ごめんなさいね、私が買っておけばよかった。熱は下がった?」

「もう!一度に言わないで!風邪薬も飲むし体温も計るよ!あとコップ割っちゃった」

「コップ割っちゃったの?」

「うん」

 私は風邪薬を飲むと、体温計を腋に差し込む。私の腋は一昨日からお風呂に入ってないせいか汗ばんでいてちょっと酸っぱい臭いがしていた。

 体温を計かりながら私は朝風呂に入ろうとお湯を沸かすことにした。湯沸かし機のスイッチを押すと体温計がピピッと鳴った。体温計を腋から取り出すと体温は38度ちょうどだった。

「38度ちょうど、まだ熱みたいだね」

「お風呂もあまりゆっくり入らないで、直ぐに出ちゃいなさいよ」

「いやよ、ちょっと今私体臭いからじっくり入るよ」

「シャワーだけにしときなさい」母さんはそう言って洗面所に顔を洗いに行った。



 お風呂が沸いたと機械が呼ぶので私はお風呂場へと行った。パジャマと下着を脱いでしまい、洗濯機にそれらをポイと投げ入れると浴室に入った。

 シャワーを浴びていると、シャワー音に雨音が遮られ優しい気分になる。体をシャワーで軽く汗を流してしまうと湯舟につかった。

 遠くでウグイスの鳴き声が聞こえた。

 お風呂から出てしまうと私は暇なのでパソコンで今朝電話があったゴールデンマジシャンについて調べてみることにした。

 パパの書斎に入る。ちなみに私は母のことは母さんと呼んでいて、父のことはパパと呼んでいる。パパの書斎はバニラタバコの匂いがしていた。

 パパのいつも吸っているタバコの銘柄はバニラ系が多い。私は未成年なのでもちろん吸わないが、パパはタバコが大好きでよく教えられる。

 パソコンチェアに座りPCを起動する。ファンの音がして直ぐにPCは点く。

 インターネットでゴールデンマジシャンと調べてみた。検索結果は0件だった。

「一体なんなんだろう」ふと私はメールボックスを開いてみる。

 未読メールが一件だけあった。題はグランドゴールデンマジシャンにお越しくださいとあった。

 それをクリックして中身を開いてみる。そこにはあの地下の無人の場所があった。

 ここに何があると言うのだろうか。

 メールにはただ画像だけで、他には何も書かれていない。

「もしかして、ストーカー?」私は紫色の髪の毛をいじくりながら思わずそう言ってしまった。「お越しくださいってどういうこと?」

 しかしながら私はこの場所に妙に惹かれているようであった。私は自室に入りパジャマから外着に着替えてしまうと、この前行った場所に向かうことに覚悟を決めた。


 母さんに見つからないように玄関をくぐる。

 傘立てから傘を出して外に出る。

 庭を出ると地面の雨でできた水は足首のあたりまであった。

 とんでもない大雨だった。ゆっくりゆっくり私はグランドゴールデンマジシャンに向かう。

「そういえば、私風邪を引いていたんだった」38度の熱でそう考える。

 大雨の通りは誰も人気がなかった。

 私一人ぼっちの街に紛れ込んだように思えて私は悲しくなる。また涙が出そうになったが、いちいち泣いていたって何も変わらない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ