プロローグ
初めましての作品なので、至らない所が多々あると思いますが、そこは「こいつはまだ青いな」という目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。
帝都市街地、深夜
ダンジョンや市街地付近のフィールドの探索から帰ってきた冒険者たちで賑わうはずの市街地は、今は謎の静寂に包まれていた。
しかし、ただ静かであるわけではなく、一つの建物を取り囲むように人々が集まっていたため、それ以外の場所が静かになっていただけであった。
人々が取り囲んでいた建物は、帝都の中ではかなり大きく、有名な酒場であった。
しかし今は、その人気ぶりなどかけらも見られず、二階建ての建物のうち、一階は窓ガラスや壁が壊され、二階の一室だけ明かりがついていた。
今、その部屋の窓が開けられ、一人の男が顔を出した。
その男は顔全体を覆うようにバンダナを巻いており、手には軍用の強力な弾丸を使用する小銃を手にし、もう片方の手には男性の頭を握っていた。
その頭を握られてる男性は、恐怖心で満たされた顔をしており、目からは涙が垂れていた。
「今から1時間ごとに人質を一人ずつ処刑していく、人質の命が惜しければなるべく早いうちに純金貨1000枚を早く用意しろ‼なるべく早くだ‼」
窓から顔を出した男は大声でそう怒鳴り散らし、そして窓を閉めた。
それから数分後に、赤いランプを点滅させながら、一台の黒塗りの大型車両が人々の波をかき分けるようにして、建物の前に停車した。
最近開発されたばかりの魔道エンジンを使用し、全体を黒で統一、車両上部には赤いランプ、そして側面にはでかでかと白色で『特別警備隊』と書かれたその車両は、『市街地で起こる事件において、衛兵でも対応できないほどの重大かつ緊急の事案』において出動する特殊部隊の輸送のための、対物理、対魔道装甲を使用した車両であった。
そして今、車両後部のハッチが開いて、中から車両の色と同じ漆黒の装備に身を包んだ10人程の兵士のような人が降りてきた。
身長も装備している銃も様々な彼らは、顔には黒い覆面、黒い戦闘服に防弾ベストに身を包み、手には自動小銃、短機関銃、散弾銃や中距離狙撃銃を持っていた。
彼らは全く無駄のない動きで降車し、車両の前に整列した。
そして全員が整列すると、中から一人の男が降りてきた。
その男は整列した兵士達と同じような格好をしていたが、違ったのは、顔に覆面をしていないことと、『部隊長』と書かれた腕章を腕に巻いていることであった。
覆面をしないため見ることができるその顔は、浅黒く焼け、強面、と言う印象を与える顔であった。
「いいかお前ら、現在この建物は下賤な賊に襲われ、大事な市民の命が危険にさらされている!さらに賊共はこちらの交渉には応じない姿勢を見せた。だから我々がここにいる!いいか、今こそ我々の訓練の成果を見せる時だ!全員、覚悟はできているか!」
部隊長は整列した兵士達の前に立つと、そう檄を飛ばした。
それに対して兵士たちは大声で、ハイと答えていた。
「よし、『特警隊』行動開始だ!」
兵士たちの返事を聞くと、部隊長はさらにそう言った。
彼らは正式名称対魔道特殊部隊『AMAT』、通称『特警隊』―――――
市街地の衛兵でも対応できず、重大かつ緊急の事案に対し、早急な解決、かつ市民の安全保護を行うための特殊部隊であり、あらゆる銃火器の扱いと格闘技、そして魔術のエキスパートである。
そしてこの事件こそが、『特警隊』に対し初めて出動要請が出された事案である。