4:対談
ここに、鏡がおかれている。
その鏡に映っている私の姿は高校を卒業したばかりの頃の顔にそっくりであった。
年齢を重ねるごとに増えていった顔のしわは無く、見た限り20代ぐらいの若者そのものだ。
やはりこれが巷のライト小説で人気の転生というものかもしれない。
先程までは夢を見ているのではないかと思ったが、ここまでリアルな夢はそうそうない。
敵機を爆発した際に鼻の中に入り込んだ煙の臭い。
撃鉄を引き起こしているルイス軽機関銃の振動。
土と湿気が混ざり合った匂い。
夢ではここまで手の込んだものはできないだろう。
走馬灯が終わって5分と経たずにコックピットに座っていたという事実。
私はこれからどのようにして戦場を生き延びていくべきか考えていた時であった。
「おお、浅川!基地司令官がお呼びだ!すぐに来てくれ!」
「ハッ、只今すぐに!」
宿舎のベッドで仰向けに寝ながら考えていると加藤飛行隊長に起こされた。
なんでも、基地司令官のモーリス・ド・マジノ少将が直に会いたいといってきたそうだ。
ベッドから飛び起きて加藤飛行隊長の後をついていく。
加藤飛行隊長は司令室まで規則正しい歩き方でしっかりと歩いている。
キビキビとした歩き方はまさに歴戦の軍人というべきものだろう。
「ここが司令室だ、司令官に失礼のないようにな………」
加藤飛行隊長は私にそう忠告すると司令室のドアを三回ノックした。
中からどうぞと声がかかり、ドアを開けて加藤飛行隊長は失礼しますと頭を下げて入室した。
私も加藤飛行隊長に続けて頭を下げて入室をした。
「加藤上等飛行兵曹、只今戻りました、彼が浅川裕一郎…一等飛行士です。」
目の前には先ほど気さくに挨拶をしてきたジェームズ大尉がいた。
その隣の立派な机に座っている司令官は丸坊主で立派な髭を生やしていた。
外見からして年齢は60歳前後だろう。
机の中から葉巻を取り出して口にくわえてマッチで火を付ける。
一息吸った後、司令官は私に話しかけてきた。
「うむ、加藤上等飛行兵曹手間をかけてすまないね、では早速だが…浅川一等飛行士、先の空戦でどのようにして敵機を迎撃したのかゆっくりと説明してもらえないかね?」
「ハッ、分かりました。ですが、口では説明がしきれないものもあります。黒板とチョークをお借りしたいのですがよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない。そこの黒板を自由に使いなさい」
「ありがとうございます、では…ご説明いたします」