36:ラストジョブ(下)
この小説最大の失敗は良く練らずにペースを上げすぎて内容を引き延ばしすぎてしまったことが原因だと思っていますので、次回作は良く考えて作っていきたいと思います。
最終話まであと2話ぐらいですが、全年齢向けの次回作は遅くても9月までに発表したいと思います。
夕暮れをバックに戦闘機が入り乱れる。
機関銃の弾が私の真横を掠めるぐらいの接戦となった。
レッドバロンに付け入る隙が中々生まれない。
連合国軍もイギリス・日本・フランスの三カ国の戦闘機部隊が10機のフォッカーと格闘戦を繰り広げているが、ドイツ軍が数に劣っていても次々と連合国軍の戦闘機を撃墜していくので、ドイツ軍のエースパイロット部隊なだけあって強敵だ。
格闘戦に移行して6分後、尾翼に19と書かれた黒のフォッカーを撃墜する。
左旋回して日本の戦闘機を狙おうとしたのが命取りとなった。
機関銃で左翼から右翼の端まで機関銃で撃ち抜く。
撃ち抜かれてバランスを崩し、そのまま黒のフォッカーは地上に落下していった。
パイロットは落下傘で脱出に成功したようだが、下は連合国軍の支配下に置かれている。
捕虜になるのは避けられないだろう。
その3分後に今度は菊池大尉が3と書かれた黒塗りのフォッカーを撃墜、同時に私の足に激痛が走る。
激痛が走ったと同時に目の前に血飛沫のようなものがゴーグルに張り付いている。
撃たれたのか…?私が…?
足元を見ると、左足の太股に太い穴が開いてそこから赤黒い血がどくどくと流れ出ている。
下からやられたか…。
機体に擦るギリギリの距離からレッドバロンが私の横を掠めていく。
「あ、浅川少尉!!!」
「だ、大丈夫です!!!マルガレーテ少尉!!!足を撃ちぬかれただけです!!!!こ、これから止血をしますので敵機を寄せ付けないように見張っていてください!!!」
「りょ、了解!!!!」
見張りをマルガレーテ少尉に任せて、私は腰に巻いている広い帯のようなベルトを解いて穴の開いた痛々しい太股を押し潰すように強く巻き付ける。
あくまでも一時的な処置だが、いくらかはマシになった…。
それでも激痛が凄まじいので、泣きながら医療キッドからモルヒネの注射を取り出して傷口近くに注射を打って痛みを強引に鎮痛させる。
後座でマルガレーテ少尉が機関銃を撃っている音が聞こえる。
モルヒネを注射したことで一時的に感覚神経がブースト状態を起こして音が頭の中でかなり反響して聞こえているので、どこで撃っているのか分からない。
大声でマルガレーテ少尉に敵が何処にいるのか尋ねる。
「マルガレーテ少尉ァァァ!!!!敵は、敵はどこだぁ!!!!!」
「浅川少尉から見て8時の方向です!!!レッドバロンが日本空軍の戦闘機に食らいついています!!」
「よーし!!!いまから反転してレッドバロンに攻撃を仕掛ける!!!他の敵戦闘機に気を付けて狙われないように後ろの援護を頼む!!!!」
「了解です浅川少尉!!!」
一気に機体を反転させて日本空軍の別の航空機がレッドバロンに攻撃されている所を狙い撃ちにしようとする。
操縦桿をいつもよりも強く握って機体を加速させていく。
周りの機体がスローモーションのようにゆっくり動いている感じだ。
「よし、もうちょいで撃てる距離だ…」
機関銃の照準器に合わせてレッドバロンの機体に狙いを定める。
味方の日本空軍の戦闘機に当てないように慎重に、慎重に狙う。
時間の感覚が狂い、たった10秒の出来事が1時間のように感じる。
狙いを完璧に定めた私は機関銃のトリガーを引いた。
放たれた機関銃の弾はレッドバロンの右翼に命中するも、他は外してしまった…。
どうやら照準器もとい機関銃の銃身がおかしくなってしまったようだ。
攻撃されたとわかったレッドバロンは日本空軍の戦闘機への追撃を中断して、すぐに退避行動に入ってしまい、撃墜するチャンスを逃してしまった。
いや、まだだ…まだ終わっちゃいない…!
一騎打ち…一騎打ちならまだ勝敗はある…!
レッドバロンと私の機体が互いに交差し、互いに反転する。
向こうも考えていることは同じかもしれない。
機関銃の射程圏内に入る直前まで機体を加速させる。
他の戦闘機には目もくれずに私はレッドバロンに狙いを定める。
息を殺して照準器を見てレッドバロンに当たることを祈って射程圏内に入った瞬間にもう一度トリガーを引いた。
スガガガガガッ!!!!!
けたたましい銃声と共に、最後の決着がついたようだ。