33:ビリー
地上では苛烈な攻撃が行われている。
イギリス陸軍の戦車大隊は菱型の戦車を20輌以上投入して、トロアの中心部に移動しながらドイツ軍が潜んでいると思われる場所に砲撃を加えている。
ドイツ軍もドイツ軍で駅中心部を死守しているようで、まだまだ対空砲が健在であった。
イギリス軍の鹵獲した対空砲で市街地中心部に連合国軍の戦闘機や爆撃機を寄せ付けないようにひっきりなしに撃ち込んでいる。
そろそろ燃料計が半分にまで減ってきた。
ジェームズ大尉が一旦引き返して燃料と弾薬を再補給してから出撃するように指示を出す。
私はジェームズ大尉の指示に従ってプレリー空軍基地に引き返す。
引き返していくと、交代のフランス軍の戦闘機部隊がやってきてすれ違いざまに敬礼して彼らが無事に帰還できるように祈った。
引き返している途中に敵に狙われないかマルガレーテ少尉に後方の安全を確認するように命令し、私は前方に意識を集中させた。
幸いにも帰りは敵機の襲撃や機体トラブルなども無くプレリー空軍基地に帰還し燃料と弾薬の再補給を受けることが出来た。
一度、休憩に入ってからまた20分後に再出撃を行う。
機体のチェックを行い、不備が無いか整備兵が念入りにチェックを行っている間、私を含むパイロット達はビスケットと一杯の紅茶をいただいていた。
さすが英国製だけあって紅茶は一級品だ、ジェームズ大尉が自費で購入したというお墨付きの紅茶だ。
甘すぎず、苦くない絶妙な味わいだ。
とっても美味い紅茶とビスケットを腹に満たした後、再び出撃する。
燃料と弾薬を再補給してプレリー空軍基地を飛びたった。
制空権はすでに連合国軍の支配下に置かれているはずだが、油断は出来ない。
ドイツ軍が増援を送ってきている可能性も否定できないからだ。
その可能性は外れていなかった。
再びトロア上空に到着した際にフランス軍の戦闘機部隊とドイツ軍の戦闘機・爆撃機の編隊が交戦していた。
アルバトロス戦闘機10機とゴータ重爆撃機2機…それとゴータ重爆撃機機よりも一回り大きくて見慣れない大型爆撃機が2機…連合国軍への爆撃を行おうとしている。
『全機、爆撃機を優先的に狙え!!特に新型の爆撃機を撃墜するんだ!!』
戦闘機部隊がフランス軍の戦闘機に迎撃していて爆撃機の護衛が手薄な今がチャンスだと言わんばかりに、ジェームズ大尉は回光通信機で送るや否や真っ先に爆撃機目掛けて突っ込んでいった。
ジェームズ大尉のソッピース キャメルから無数の弾丸が新型機の翼を撃ち抜く。
だが、新型機はびくともしていない。
ジェームズ大尉に仕返しとばかりに大型爆撃機に搭載されていた銃座から集中砲火を受ける。
ジェームズ大尉の機体の右翼に弾が貫通し、被弾するも何とか姿勢を直すことに成功したようだ。
これは手強い相手になりそうだ。
正面から側面を貫くようにしたほうがいいのかもしれない。
正面角度から大型爆撃機に侵入し、機関銃を放つ。通り過ぎていく大型爆撃機の右側面目掛けてマルガレーテ少尉も銃座から銃撃を行う。
左側と後部の銃座から反撃を受けるも、手早く降下して被弾を避ける。
今度はもう少し距離を取ってから攻撃を仕掛けよう。
右側の銃座は沈黙している。
さっきの攻撃が効いているのだろう。
旋回して再度、私は大型爆撃機の右側面目掛けて機関銃のトリガーを思いっきり引いた。
何十発もの銃弾が大型爆撃機の腹に撃ち込まれる。
弾薬庫に誘爆したのか、派手に爆発を起こして大型爆撃機はそのまま下に墜ちていく。
ゴータ重爆撃機機よりも爆風と爆発の炎が大きかったので、恐らく倍以上の爆弾を搭載していたのかもしれない。
まだゴータ重爆撃機機2機ともう一機が健在だ…。
再度攻撃を仕掛けるかと思ったその時、私はアルバトロスの戦闘機がダメージを受けたジェームズ大尉の機体を撃墜してしまう瞬間を目撃してしまった。
ジェームズ大尉「あっ、これは死ぬかもしれん…」