28:白鯨
頭○字Dの音楽を流しながら車を運転すると制限速度を10キロオーバーしそうになるので初投稿です
「ヴェルトハイム級軍用飛行船が…3つもいるぞ…ここからでも判るぐらいに多いな…」
「西部戦線には6隻いるはずですので…他の3隻は各戦線に投入されているのでしょう…写真を撮っておきますね」
「えぇ、お願いします」
マルガレーテ少尉がカメラのシャッターを切る。
パシャパシャと幾つも写真を撮る。
巨大なヴェルトハイム級軍用飛行船が3隻も停泊している。
他にも地上にはゴータ重爆撃機やフォッカー戦闘機が20機ほど地上の滑走路付近に並べられている。
「私はここでゴータ重爆撃機の機体を授与されて、プレリー空軍基地に新兵器を投下する予定でした…そのお話はもうしましたっけ浅川少尉?」
「ええ、確か爆撃機から投下したらある程度誘導できる小型飛行機ですよね、一昨日お伺いした際に話しましたね」
マルガレーテ少尉がドイツ軍で担っていた新兵器の実戦テスト…。
無人の小型飛行機を爆撃機に収納して距離と速度を入力して投下すると自動的に目的地周辺で自爆する誘導兵器の実戦テストを行おうとしていたらしい。
小型飛行機はドイツ語で幽霊を意味する「アイ・ガインズ」という名称で、10キロ程度の小型爆弾を積んで地上目標に突入して自爆する用途で開発されているようだ。
すでに実戦テストを行えるだけの代物が完成しているとなると、こちらの第一次世界大戦は軍事力の進歩が大幅に進む可能性が出てきている。
日本も爆撃機に搭載してロケット推進で敵艦に体当たりを行う「桜花」と呼ばれる自爆機を実戦投入したが、あちらは人間が搭乗する特攻機に対して、マルガレーテ少尉が実戦テストで行おうとしていたアイ・ガインズは無人機だ。
もしかしたら、戦争がどちらの陣営が勝利しても無人機ないし誘導兵器の類は史実よりも発展するだろう。
「そのうち、アイ・ガインズをあのヴェルトハイム級軍用飛行船に搭載して近隣都市に落としまくればそれこそ厄介だ。見た限りではそれらしい機体は見当たらないな…」
「アイ・ガインズはまだ試作品の段階なので予備機がないのかもしれません…私が見た資料では実戦で有効性が実証されれば9月までに量産される予定でした…ただ、アイ・ガインズの動力制御盤等が高価であるので、量産できたとしても一日に2機ぐらいだと思われますよ」
動力制御盤…私が航空自衛官だった時は制御盤と呼んでいたな…戦闘機にも搭載されているが、まだ計器系統は必要最低限の装置なものだけだ。
とはいえ、アイ・ガインズには初歩的ながらも真空管が詰まれていて、その真空管から制御を行っていると説明を受けた。
それによって、爆撃機から切り離されたアイ・ガインズが目標地点をほぼ正確に爆撃できるようになっているという。
「そうなると、量産したアイ・ガインズは軍事施設や要塞の司令塔といったピンポイント爆撃を担うことを想定して開発が進められているということですか…このヴェルトハイム級軍用飛行船からアイ・ガインズが出てこないことを祈りましょう…」
「ええ、浅川少尉…カメラにしっかりとヴェルトハイム級軍用飛行船と他の航空機等も撮影しました、旋回してプレリー空軍基地に戻りましょう」
「判った、ではこれより旋回してプレリー空軍基地に戻ります、カメラを落とさないようにしっかりと固定してくださいね」
「了解です…あっ、浅川少尉!!!5時の方向からフォッカー アインデッカー4機が向かってきています!」
どうやら敵に発見されたようだ。
フォッカー アインデッカー4機はこちらに向かってきている。
旧式化しつつあるとはいえ、後方の防空任務に就いている機体のようだ。
私は機体を加速させてフォッカー アインデッカーからの追撃から逃れるために、命がけの鬼ごっこをすることになる。