18:地上支援1
加藤飛行隊長に続いて低空で建物が建て並ぶ街並みを抜ける。
損壊している建物が多く、日の丸の旗を掲げた味方の日本陸軍の部隊を見たが、並べられた兵士の亡骸と空の薬莢があちこちに散らばっており、土嚢や放棄された自動車などで作り上げたバリケード前にしゃがんでドイツ軍を待ち構ている。
地上の兵士達は友軍機の姿を見て、こちらに向かって手を振っていたが一人の兵士と目線が会う。
その兵士の顔はかなりやつれていた。
右の頬に怪我をしたようで、包帯が巻かれていて血が付いていた。
半分放心状態だったのかもしれない。
(地上は激戦か………万が一撃墜されて助かったとしても敵陣のど真ん中だったらアウトだ………)
低空で接近して間もなく、ドイツ軍の部隊を確認した。
ドイツの旗を掲げて大通りを進軍している。
トラック3輌、うち1輌は機関銃のようなもので武装しており、大型の装甲を施された戦車と思しき車両も一輌ある。
トラックや戦車の速度に合わせて走っている兵士の数から察するに、ざっと陸軍一個中隊規模だろう。
こちらの存在に気が付いたドイツ軍の兵士が、トラックに積まれている重機関銃でこっちに撃ち始めてきた。
それに続けてドイツ軍の兵士は散開して建物の中に逃げ込む者や、携帯可能な軽機関銃を持っている兵士はこちらに向けて発砲を始めた。
(…くっ、マズイ…被弾しないことを祈って突っ込むしかない…まずあの対空砲代わりに戦闘機を狙っている重機関銃を乗せたトラックを黙らせねば!!!)
加藤飛行隊長は戦車に狙いを付けて100ポンド爆弾を投下し、それに続けて私は対空砲を積んでいるトラックに照準を定めて、爆弾を投下した。
パシュッ…という切り離した音がしてすぐにドーンと爆発音が聞こえる。
振り返ると、トラック目掛けて切り離した爆弾が命中したようで、トラックは大破炎上していた。
戦車もキャタピラ部分に爆弾が命中したようで、白煙を上げて動きが止まっていた。
「浅川裕一郎…敵トラック一輌を破壊!!!」
私がトラックを破壊した矢先に吉村一等飛行士の乗った戦闘機が地面に墜落した。
先程の重機関銃の攻撃が私の後ろにいた吉村一等飛行士のコックピット部分に直撃したらしい…。
機体を左に回すように旋回して建物に接触した直後に大通りに墜落した。
吉村一等飛行士の機体は派手に部品と炎をまき散らしている。
ドイツ軍の兵士も数名墜落に巻き込まれたようだが、吉村一等飛行士は確実に絶命しただろう。
(転生した際に私に色々と場所を教えてくれた人だった………くそっ!!!敵が死ぬときに味方も死ぬこともあるんだ!!!しっかりしろ浅川!!!これが戦争なんだ!!!)
爆弾を一通り投下し、再度反転してドイツ軍の兵士目掛けて機銃による攻撃を行う。
先程の攻撃で対空砲は排除され、戦車も上部へ射線を向けれないようだ。
加藤飛行隊長はキャタピラが外れて白煙を噴き上げている戦車に狙いを定める。
戦車の弱点である後部のエンジン部分目掛けて彼は機銃を放った。