11:同席
「わ、私が同席するんですか…ですが…それはなぜでありますか?」
「お前が疑問になるのも最もだ…だが、同席を希望したのはマルガレーテ少佐のほうなんだよ」
「マルガレーテ少佐がですか…?」
話を聞くとこういうことらしい。
私が転生した直後にその半数を撃墜したドイツ陸軍第13戦闘機部隊はドイツ軍の中でもベテランパイロットの集まりだったらしく、パイロットがまだ入りたての新米パイロットである私によって撃墜されたことがかなりマルガレーテ少佐にとって気掛かりであったようだ。
そこで、ドイツ軍の機密情報を教える代わりに、私を同席させるように注文をつけたそうだ。
「少佐階級ともなれば捕虜になった際に多少の要望は通ると聞いた事はあるが…パイロットの同席を希望するなんて聞いた事が無いぞ」
「ごもっともです…それで、尋問は何時ごろになりそうなんですか?」
「今日の午前10時30分だ。今はトラックで他の捕虜と移送されるらしい。到着したら呼び出されると思うから、それまでは自由にしていていいぞ」
加藤飛行隊長から自由にしていいと言われたが…捕虜の尋問の仕方なんて航空自衛隊の中ではやらなかったぞ…陸上自衛隊ではレンジャー部隊や特殊作戦群といった特殊部隊が尋問に対抗する訓練を受けているという噂は聞いた事があるが、その方法までは聞いた事が無い。
レンジャー部隊はメディアでも露出があるが、特殊作戦群に関しては同じ自衛隊内でも殆ど情報が分からない。
中央即応隊にいた補給班の知り合いに聞いたところによると、他国から攻撃を受けた際に攻撃国へ潜入し、要人の暗殺やAK-47やM416カービンライフル、グロック18といった正規の自衛隊では使用されていない武器を使用する訓練を積んでいると聞く。
尋問に対しては自白剤や目隠した上で口に布を被せて水を掛ける水責めが最も効果的であるとされており、アメリカでは、水責めは肉体的には傷をつけないので、推進されている方法である。
「それにしても参ったな…同席とはいえ、マルガレーテ少佐に話すことなんてないぞ…下手に軍事機密にあたることを喋るわけにはいかないし…とにかく、当たり障りのないことを言うしかないな…」
それから私は午前10時30分になるまで、酒保で煎餅と焼きいもを買ってミーティングルームで、雑誌を読んで加藤飛行隊長のお言葉に甘えて自由にさせてもらった。
雑誌は英語で書かれているが、その多くが今日でいうところのゴシップ雑誌だったので、あまり退屈せずに済んだのは良かった。
自由時間にレコードを掛けたり、ラジオ放送を聞いていたりと大分軍規は陸海軍と比べたら緩やかなものだ。
どのくらい尋問に時間が掛かるのかは分からないが、呼ばれたらいくしかない。
時間はあっという間に過ぎていき、午前10時30分きっかりに、私はフランス・イギリス軍の兵士に呼び出しを受けて、尋問室へと足を運んでいく。