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わたしが木になる、その時に  作者: 神酒屋
第一章 始まるなら、それは種
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第9話 次々に目に映るものは

本日2話目の更新です。

 利点やそれに対するリスクについて考えも纏まったので、身振り手振りで了承することをスミルドさんに訴えた。

 そんなわたしの挙動を見て納得したのかメルタールさんも了承すると、スミルドさんは懐から綺麗な彫り物の施された水晶を一つ取り出した。


「それでは、これからスキルの結晶化を行います。アルは動かずにいてくださいね。『励起せよ、映し出す水晶。力は其処に在る事を自覚する。《異質なる知性》は、眩く、硬く、美しく。其の内を形取り、解体し、解析し、解明する。そして力は結晶となる』」


 スミルドさんがわたしの頭の上辺りに取り出した水晶を翳して呪文的なものの詠唱を始めると、手にしていた水晶は内から光が漏れるように光り始めた。

 うおー、見るからにファンタジーですわー。この身で目覚めてから一番幻想的な光景ですわ。

 詠唱が続くに従って水晶の光り方が変わっていく。始めは電球なんかみたいに全方位に向かっていた光が、わたしのおでこ辺りに集中する。どこぞのアニメ映画でこんなん見た気がするな。


 スキル名が言われた辺りで外側に強く出ていた光が内側で何かを形作るように変化して、その後は言葉が続くに従って目指す形が定まったかのように纏まりを見せるようになる。

 最後の一言が宣言されたところで確りとした形になった。

 水晶の中身を見れば、そこには光が明確な文章として形を成しているのがわかった。わかったんだけど……。


「(読めないな、これ)」


 そう、其処に表示されている文章はどう見てもわたしの知っているどの言語とも違っているのであった。

 ステータスのときとは違って、眺めていても意味がなんとなく理解できたりはしない。どう考えても詰んでいた。喋っている事の意味はわかるのに書いてある事の意味がわからないとは、どういうこっちゃ。クレームものだぞ、何処に訴え出ればいいか分からないけども。


「ふむ、結晶化は無事に成功しましたね。しかしなるほど、覚醒と同時に現れるありえざる知性の表出ですか。スキル自体が持つ影響は知力と精神に対する補強、成長によるより上位への発展。ですか」


 訳知り顔でスミルドさんが呟いた。表情を見たところネガティブな内容ではなさそうだ。なおメルタールさんはなんか凄いんだなぁって顔だ。

 それにしても知力と精神に対する補強というのはINTとMNDの上昇のことだろうけど、成長による上位への発展か。それはわたし自身でステータスを確認しても見えなかったな。

 これがつまり、スキルの結晶化ってやつの利点か。


「あとはこのサンプリングクリスタルを携帯に適した状態に加工して、アルに持たせればおしまいですね」

「おう、じゃあそれが終れば早速村中に紹介して回りますかね」

「それでは身に着けやすいように装飾してしまいますね」


 そういってスミルドさんは棚から掌大の金属塊を取り出すと、サンプリングクリスタルを合わせて両手で包むように胸元に当てた。


「『触れ合え無垢なる(しろがね)、小人は手を繋げ、平らなる地より四方へ伸びよ、自由な小人は掴める手を出せ、四つ人は一つに重なれ。固定せよ、繋ぎ止めよ、それこそが新なる姿。変わることのない魂を』と、まぁこんなところですかね。残念ながらわたしにはデザインの才能はないので、その辺りは勘弁してくださいね」


 呪文を唱えながら手の中をピカピカ光らせていたスミルドさんが合わせていた手を開けると、こそにはサンプリングクリスタルに纏わりつくようにして編まれた金属細工が顔を出した。

 鎖が四本伸びていて、その先には止め具のような部品がついている。ネックレス、なのかな。

 ところで今の魔法っぽいけど、わたしも出来るんだろうか。出来るなら最高に格好良いデザインのものを作ってみたいんだけど。スミルドさん教えてくれないかな。


 今日は色々と興味深いものを見せてもらった。サンプリングクリスタルとやらもそうだし、それに続いて今のアクセサリを作るところも益々もってファンタジーだ。

 中学二年生だったころから心の内で育てている病が刺激される光景が続くなぁ。そういう意味では見たこともない文字っていうのも心擽られるものがあるな。


「さて、これをアルにつけてあげましょうか。留め金の構造はシンプルになっていますから、ここをこのようにしてやれば、簡単につけられます、と」


 わたしが思考を明後日の方向に飛ばしている間に、そういってスミルドさんは出来上がったアクセサリをわたしの胴体に巻いて止め具を固定した。

 なんだろねこれ、なんか不思議なつけ心地だね。体の大半部分に巻かれている鎖のアクセサリってちょっとアブノーマルな香り。そっちの趣味はないから興奮とかはしないけど。


「これでもう連れて行って良いんだよな、スミルド?」

「えぇ、一応今後も色々と調べさせて欲しいですが、今はこれで問題ありませんよ」

「よし、じゃあアルよ、挨拶回りに行くぞ!」


 善は急げといわんばかりに、すいっとわたしを抱え上げたメルタールさんはそのままスミルドさんの家を飛び出していった。

 速い速い速い!この人良い大人のはずなのになんでこんなフットワーク軽いんだ、玩具貰ったばっかりの子供か!

 窓から飛び出して、噂通りのわっはっは笑いでメルタールさんは駆けていく。まずは畑回りに行くそうだ。自分が面倒を見ている畑の隣近所の人たちに自慢し倒していたらしく、早速見せびらかしに行くそうだ。

 そんな話をされながら、わたしはメルタールさんの腕の中で揺られて運ばれていくのだった。

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